アズマロルヴァケル

ホワイト・ラバーズのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

ホワイト・ラバーズ(2016年製作の映画)
3.4
思ったよりも切なかった映画

・感想

この映画は2016年にカンヌ国際映画祭の監督週間に正式出品された映画で、監督は『きみへの距離、1万キロ』、第85回米アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『魔法と呼ばれた少女』のキム・グエン監督がメガホンをとっています。

映画は互いに辛い過去を抱えている少年少女が北極圏をスノーモービルで逃避行を繰り広げるというもので、淡々でスローテンポかつ芸術路線な映画ではありました。

特に良かったと思うのは主人公のローマンが唯一の友人であるシロクマと話すシーンがとても印象的でホッコリさせられる。映画の内容がちょっと真面目で手堅いつくりなのだが、シロクマは若干シロクマの声からして40代~60代程の往年のシロクマっぽいのだが、同じクマ?が活躍する『パディントン』や『テッド』と比べると比較的にシュールでかつシロクマとローマンとの掛け合いが面白い。ただ、ローマンがシロクマと話ができるという能力を持っているせいで実質、過去にDVの父親に殴られていたりされてのかなぁなんて思ってしまう。

また、あまり描写が少ないもののローマンの恋人ルーシーが2年前にこの世を去った実の父親の幻覚に苦しんでおり、大学に合格したものの、そのことが原因でローマンを求めようとしている。物語ではちょくちょくローマンのあのシロクマ同様にルーシーの父親がルーシーを追い詰めようとする描写があるのだが、その度にある種のホラー・スリラー要素が盛り込まれていてとてもスリリング。しかし、ルーシーの幻覚をローマンが後半に実行するある行動でなかなか華麗に美しく映像のなかでルーシーの過去のもやもやに終止符をつけている。

また、ローマンとルーシーのラブシーンがあり、決して激しい濡れ場でもなければフルヌードで見せてるわけではないものの、映像としてはローマンとルーシーの吐息やルーシー演じるタチアナ・ラズアニーさんの小さい乳輪がエロいです。全部で3つほどラブシーンがありましたが、どれもエロくてリアリティはありました。

ただ、映画全体としてはどうもまだ描写が物足りない印象ではある。少なくともローマンとルーシーの過去はちょっとした説明台詞しか語られていないので、結局はうっすらとしか物語の背景が掴めず、また冒頭でルーシーが暮らしてる場所で友人がルーシーの誕生日パーティーを開いているシーンがあるのだが、いまいち描き足りていない。なので、映画自体はもう少し映画の設定や世界観を敷き詰めた方が傑作に成り得たのではないかと私は思った。

ラストは事実上ローマンの荷物を運ぶためのスノーモービルが氷の裂け目に入っちゃった点や猛吹雪による悪天候のせいでこうなってしまったのかなぁとあとあと思うが、切ないと思ったと同時にもうちょい展開が欲しかった。個人的にはローマンとルーシーの過去はもうお互い乗りきって孤独を分け合って生きてもいいのだからローマンかルーシーのどっちかが生きてても良かったのでは?と思いましたよ。