ぴろ

溶けるのぴろのネタバレレビュー・内容・結末

溶ける(2015年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

 何者にもなれない片田舎の女子高生の葛藤を描いた、ほろ苦くも瑞々しい一作。

 とある山間の町に住む主人公は、明るい未来の見えない周囲の環境や自分の人生に鬱々とし、衝動的に近所の川に飛び込むことを繰り返していた。漫然と生きている周りの人々を軽蔑し、自分はそんな奴らとは違うと思い込もうとしても、どうしようもなく襲ってくる虚無感と閉塞感。川に飛び込めば一瞬でもそうした気分を忘れられるのだろうか...。
 この、10代独特の息苦しさは私にも身に覚えがある。人生という大海原を前に萎縮し、自分のちっぽけさに絶望する。面倒事は全部放り出し、誰も私のことを知らない場所に逃げ出したくなった時もあったなぁ。しかし、心のどこかで分かっているのだ。何処へ行っても、何をしても、所詮自分は自分でしかないことを。
 家出して東京へ逃げようとした主人公は、過ぎゆく故郷の風景を見る中で涙を流し、途中で引き返す。そのはっきりとした理由は分からない。しかし、ラストシーンの主人公は、今ある自分以外何者にもなれない自分を認めてあげようと、1歩を踏み出したように私には見えた。
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