三条狼

浮雲の三条狼のレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
3.5
ずっと見てみたい作品だったので上映を知ってスケジュール調整しっかりしたものの、金沢で被災した同居人の帰宅が当日朝に
→その同居人の恋人が地震の際あまりに頼りにならなかったという愚痴大爆発で、あわや観に行けないかと思った。
なんとか観に来られたと思ったら男女の地獄みたいな話で、これはもう私に恋愛はするなというお告げかと思ったよ。女よ、男を信じるな。

というわけで林芙美子「浮雲」を完全映画化(?)した本作。戦争中南国で出会って恋に落ちたものの、戦後女が追いかけてみれば男は妻と別れず、パンパンになってみれば「たまには会いに来てもいいだろう」とか言われ(死)、それでも別れられず一緒に温泉とか行くんだけどその旅先で新たに若奥さんをひっかけたりされ(死)、もう別れるかと思ったら全然別れないし、一方で初めての男(義理の弟)とも縁が切れなくてという話でした。2時間、めためた長い。

ただこの映画の素晴らしいところはとにかく高峰秀子さんが強かであるというところ。こういう作品だとたいがい女は嘆くだけだったりするのでイラっとするんだけれど、あまりにもひどい境遇ながら彼女はちゃんと自分の意志で生き抜こうとしているところが良かった。都度都度正しい判断なのかどうかはさておき。

だからこそこのラストが尚更つらいし男がひたすらキモい。そもそもこのたいして格好良くもないのに女を次々とだめにする毒舌男はなんなんだろうか。キッチリ責任も取らずふらふら言い逃れしては消えたり現れたりして、彼こそ幽霊かなんかなのか? と思った。女子会で上映して袋叩きにしたい男ナンバーワンでした。この時代の源氏物語、という解釈でええかな最早。
三条狼

三条狼