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もずのRenkonのレビュー・感想・評価

もず(1961年製作の映画)
3.8
渋谷実作品を観たのは今回が初めて。って監督の名前すらも知らなかったんだけど、当時の松竹では小津安二郎や木下恵介らに次ぐ人気だったそうな。
今作は20年ぶりに再会した母娘の衝突と絆を描いた群像劇である。
母娘の物語といえば「秋日和」辺りを想起するのだが、今作はそれらよりももっと辛辣。
単純に母娘の衝突というだけでなく、女同士の意地とか嫉妬が介入している感じだ。

母親が女を晒す瞬間を酷く軽蔑する娘。
一応母親想いの娘ではあるのだけれど、母親の愛人と食事に行ったり、母親に行くはずだった縁談を自分が受けたりと、まるで母親の"女"としての矜恃を踏み潰そうとするような行動を繰り返す。
娘との再会により(女として)色を売れる期限の短さをヒシヒシと感じ始めた母親も、度々ヒステリーを起こしてしまい娘と衝突してしまう。

ラストに向かう突き放し具合は「この2人再会しない方がよかったんじゃね?」と思ってしまうほどで、血の繋がった親子だからと言って共存することがこの世の全てじゃないのかなと思った。

一番好きなシーンは、お見舞いに来た女中たちがやんややんやとしゃべくり合い、縁談を娘にしてしまったおばちゃんを責めるシーン。
このおばちゃん役を演じたのは「若松の女将」でお馴染みの高橋とよで、いじけた彼女が地べたで鍋焼きうどんを啜る画がともかく最高だった。

(@シネマヴェーラ/2015.7.8)
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