デニロ

結婚式のメンバーのデニロのレビュー・感想・評価

結婚式のメンバー(1952年製作の映画)
3.5
エキセントリックな12歳の少女を観ながら、幼い隣人の従弟を観ながら、少女に教え諭すメイドを観ながら、そして職人の父親を観ながら、これ最近観たような作品だぞ、とモヤモヤし始める。

題名からお気楽なコメディだと思って観に行ったんですが、製作スタンリー・クレイマーと出て、なんか間違えたかなと思い始め、監督フレッド・ジンネマンでこれは違うんじゃないかと。

エキセントリックな少女フランキーを演じているのが当時27歳のジュリー・ハリス。本作の数年後に『エデンの東』でアーロンとキャルを秤にかける魔性アブラを演じます。本作でも凄まじいばかりの演劇的所作をみせて観客を圧倒します。また、従弟のジョン・ヘンリーを演じたのはブランドン・デ・ワイルド。この翌年、/シェーン!カムバック!・・・・グッバイ!シェーン!!/と叫んだのでした。

空から不快指数だけが落ちているんじゃないかと思うような暑さ。ミント・ジュレップをお兄さんジャーヴィスとお義姉さんになるジャニスのふたりに運ぶ。ふたりはついに結婚するんだ。お兄さんは兵隊さんで束の間の休日の結婚式。それを思いながらフランキーは興奮して騒ぎまくる。この辺りの感情はさっぱり分からないけれど。もしやすると妹の兄に向かう背徳の恋情?とにかく騒ぎまわります。その姿を横目に見ているメイドのベレニスは、あんたのかんがえていることはマルっとお見通しだ、と窘めます。企みがあるのだろう、結婚式の祭壇にあんたも登るつもりだろう、そんなことは許されんのだよ。そ、そんなことしないやい(ず、図星だわ)。とにかくモヤモヤと騒いでいるには他にもいろいろと些細な事柄が頭の中を駆け巡って彼女自身は収拾がつかないのです。親友のイブリンは引っ越しちゃうし、隣家の少女の弾くピアノの音はウザいし、同じ年頃の女子はクラブに入って楽しんでいるけれどわたしはクラブに入れない。臭いって誰かに告げ口されているから。12歳なのに背丈が167㎝もあるし、このまま大人になったら3mの化け物になっちゃう。ジャーヴィスとジャニスのJAに倣ってわたしもJASMINEに変えたいのになぜ変えちゃダメなのよ。

キッチン。ベレニスのお城。ベレニスはベレニスに生まれついて、わたしはフランキーに生まれついて、ジョン・ヘンリーはジョン・ヘンリーなの。そう言ってベレニスは抱きしめてくれた。ジョン・ヘンリーもベレニスに抱きついてる。

これで終わったわけじゃないわ。結婚式を滅茶滅茶にしたフランキーはそう言いながら、その夜、鞄を持ち家を出る。パパ、11ドル貰っていくわね。憧れの自由って何かしら。行き過ぎる列車をやり過ごしてネオン瞬く夜の道を歩く。男が向こうからやって来る。ちょっと立ち止まってやり過ごす。飲食店をウィンドウ越しに覗き込んでみると、‥‥とてもわたしが入れる雰囲気じゃないわ。どうしようと思いながら探っていくと「ブルームーン」というバーで兵隊さんがピンボールで遊んでる。お兄さんと同じ制服。意を決してお店に入り兵隊さんに声を掛ける。コーラをご馳走になってお話していると入り口におまわりさんの姿。/パパが届け出たのかしら、わたし家出してきたの。/奥に個室があるからそこに行こう。ビールとコーラ持って来て。/少し酔っている兵隊さん。わたしの手をつかんで離さない。そのうちに近付き抱き寄せられてキスされそうになる。

家に戻ると、明かりもなくパパもベレニスもいない。隣家のジョン・ヘンリーを呼ぶと、ジョン・ヘンリーの部屋の窓を開けてベレニスが、彼は急な病気で・・・もう・・・、もう寝なさい、と言って窓を閉めた。

この原作小説は『なまいきシャルロット』のネタ本とのことで、シャルロットが使っていた「ブルームーン」という香水も大人の入り口(バー ブルームーン)の隠喩なのだと、そんな風に感じながらシャルロットがルルに香水をつけてあげるシーンを思い出す。

1952年製作。原作カーソン・マッカラーズ。脚色エドナ・アンハルト、エドワード・アンハルト。監督フレッド・ジンネマン。

シネマヴェーラ渋谷 文学と映画 にて
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