Kana

アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男のKanaのレビュー・感想・評価

2.0
ホロコーストの中心人物であったアイヒマンを、追い詰めることを諦めなかった人たちの話。

誰がドイツを壊し、誰がドイツを復興させたのか?
検事長は言った。
「我々は森や山々を作ってはいないのだから、誇ることはできない。
ゲーテやシラー、アインシュタインも、それは個人の業績だ。
我々が誇るべきなのは、我々自身が行う善行のはずだ。」

過去に何があったとしても、人は今を生きている。
しかし歴史は文化に根付き、文化は人を作る。
街も言語も食べ物も、国民性や地域性を作っている。
全てのドイツ人が、ドイツの持つもの、生み出したもの、ドイツの歴史を誇りとして掲げるのであれば、
ドイツ人の犯したホロコースト、ドイツの生み出したファシズムにも責任を持たなければならない。
そんな風に考えると、ユダヤ人として迫害される側にいたドイツ人である検事長の言葉は、とても、とても重い。

第二次世界大戦について、ナチスドイツについて、自分の無知さを痛感しました。
この映画、説明が一切ないので事前知識がないとよくわからない…。
そもそもアイヒマンて誰よ、と…。

オットー・アドルフ・アイヒマン(1906-1962)は、ゲシュタポ(ゲハイメ・シュターツポリファイ…ナチスドイツ期の警察、ナチスドイツ親衛隊)のユダヤ人移送局長官で、アウシュビッツを含めたユダヤ人のホロコースト、絶滅収容所への大量移送に関わった。

モサド(イスラエル諜報特務庁)
1948年、第二次世界大戦の功労としてユダヤ人国家、イスラエルが独立した後作られた情報機関。
ホロコーストの罪を裁くため、多くのナチス戦犯を捕えることに注力していた。

戦後残ったナチス党員はおよそ800万人。
連合国はナチズムの根絶のため、親衛隊、ゲシュタポの人間、ナチスドイツ関係者全員を集め、尋問により真実を見極め、戦犯から一兵士まで5段階に仕分けした。
多くの人は、
「考えたのはヒトラーだ、ヒトラーは全てのことを自分でやろうとした、全ての行動が正当化されていた、言われたからやっただけだ。」
と言って罪を逃れようとした。
ニュルンベルク裁判では、24名の主要戦犯が裁かれ、その半数が絞首刑とされた。
当時のドイツ国民は荒廃した国の再建に力を注いでおり、連合国と後の西ドイツにより裁かれたのは6650人程度にすぎなかった。
しかし戦後ドイツの司法省職員の、7割以上は元ナチス党員だったとされる…。
彼らは互いに庇い合い、罪を償うことなく逃げ仰せた者も多くいた。

2011年、2015年、2022年…新たに有罪判決が下された。
今現在でも、90代になった元ナチ党員を追い続けている人がいる…。
でも、じゃあ、ナチスドイツとKKKは何が違うのだろう?
ナチスドイツを裁いた連合国、その中心にいたアメリカで、今もなお白人至上主義が続いている。
ホロコーストを絶対に繰り返してはならないと、他民族を排除し、テロ組織を殲滅しようとするイスラエルがいる。
ナチスドイツは壊滅し、ホロコーストは終わったけれど、今も私たちはその地続きの世界に生きているという事…。
Kana

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