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性的犯罪の教授のレビュー・感想・評価

性的犯罪(1983年製作の映画)
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崔洋一監督の作品はいつも物足りなく感じる。その物足りなさも、監督自身が実際のところ実感しているような発言を聞いて、俄然興味を持ち観てみることにした、というのが鑑賞の動機。

全体を通して取り立てて際立った面白さはやっぱり感じない。
日活ロマンポルノ作品としての「低予算」は無論、理解したとしても、映画的なフィクション世界と、リアリズムのバランスが中途半端なのは、それこそが崔洋一の作家性の部分にも紐付いているような感じる。
映画としては面白さも感じないし、完成度という意味でも惹かれないのだが、しかし、一方で映画監督の全てが「天才」であるわけでもなく、むしろ映画にとってもその「普通」というのがむしろ当たり前のことなのだと思ったりする。

しかし「巨匠」だけが映画なのではなく、映画や、監督の数だけさまざまな技量があって、その力量から窺える作家性というものを読み解くのも楽しい。それもまた映画を観ることを課している自分にとっては真実で。

それ故に奇を衒った擁護にも見えるかもしれないし、何なら映画そのものを上から目線でバカにしているように聞こえるかもしれないが、本作には本作のサイズ感故の魅力がちゃんとあるとも思う。

河原さぶと、風祭ゆき、山東ルシアの三角関係。自動車解体屋の社長夫婦に異物として入り込む人間関係の構図。
そこから生まれる愛情も、同じ苦労と罪を背負った同士の友情めいた関係性も腑抜けた男の調子に乗った才気が現実に駆逐されることで目覚める女たちの「生気」をセックスを通して表現している点はちゃんと面白い。
そう、もはや現実世界では「敗北」した男が腑抜けになり、それによって2人の女たちはそれでも「足掻く」生命力を発し続ける対比は観応えがある。

その点は面白く観ることができたのだが、本作には映画のディティールとして機能すべき「怖さ」が全く欠けているのは残念。
借金の取り立て自体もそうだし、金貸しの持つ人間的な怖さや迫力も皆無。
主人公3人への追い込みが切迫していないので、偽装殺人といった人間が犯罪に追いやられていくドラマの追い込みが不足している。

それ以上に肝となるセックスシーンに対して「照れ」があるのか、即物的に撮られていると思いきや、急激にズームアップするといった演出的に効果的と思えない「寄り」のカメラワークが醒めてしまう。

とはいえ、短い尺の中で、低予算映画でもありつつ、それなりに楽しく観ることができたし、そうは言ってもちゃんと「映画」然とした脚本と世界観は感じることができて、満足感はあった。
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