くじら

否定と肯定のくじらのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
4.0
 実際に起きたナチスによるホロコースト否定論者による裁判について描いていた。

あらすじ
 アメリカに住むユダヤ人女性でホロコースト専門の学者デボラが、イギリス人でナチス信奉者かつホロコースト否定論者の歴史学者アーヴィングに、イギリスで名誉毀損?で訴えられる。
 アメリカと違い、イギリスでは被告側が無罪の証拠を提示しなければならない。主人公はホロコーストの生存者に証言してもらおうとしていたが、証言台に立てばアーヴィングによる糾弾にあって苦しむだけだと弁護士に止められる。弁護団は実際にアウシュビッツに行き調べたり、アウシュビッツの資料を提示したりアーヴィングの膨大な日記や差別的な講演、執筆した論文の穴を探しアーヴィングが歴史学者として正しくないことを暴く。裁判官がアーヴィングが自説を信じているなら事実と違っても嘘とは言い切れない?と言うも、判決はデボラ側の勝訴。最後デボラは記者会見を開き、プレスリーが死んだことくらい実際に起きたことだと言い、また弁護団への感謝を述べる。アーヴィングは敗訴し歴史学者として地に落ちても自分の主張を続けていた。

感想
 裁判での戦略の描き方がよく、裁判ものとしても楽しめたように思う。またデボラはアメリカ人のため、イギリスの静かなやり方や語らせないという戦略に不服だったという違いもよく描いていた。
 ホロコーストの研究内容への調査も、ユダヤ人たちの受けた残虐な殺戮も、痛みもまたそれを調べて伝えていくデボラたちユダヤ人と、その痛みを見、裁判に勝つために証拠や弁論を練る弁護士の描き方もよかった。
 差別主義者のアーヴィングがユダヤ人も有色人種も女性も自分たちが所属する集団以外を排除すべきと演説などで差別的発言をしていた。この発言に恐怖を覚えるとともに、デボラが援助を求めたイギリス人たちの示談にすればいいという言葉も覚えておきたい。

 (差別主義者のアーヴィングの主張も、歴史修正主義のことも今現に存在し、また日本においても公文書の廃棄や日本全国各地の図書館などの資料の保護が危ぶまれている現状がある。この裁判ではかなりの証拠が提示されていたが、アウシュビッツもホロコーストも最初は否定の声も大きかったが長く研究され今では誰もがあったことだと学び、親衛隊の生き残りは未だ許されることはない。今の日本ではこのような正義を求めることは難しくなっていくだろうと危機感を覚える。)
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