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女神の見えざる手のStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

原題"Miss Sloane"。女の生き様映画であり法廷映画でありスピーチ映画。氷柱のようなクール・ビューティー、ジェシカ・チャステインの冴え冴えとした存在感が光る。スクリーンに知性を叩きつけるような骨太のたたずまい。こんなに知が優った印象を与える女優はキャサリン・ヘプバーン以来ではないか。

速いペースでミス・スローンの優秀さが示される。

その有能さの示し方が少し典型的な有害な男性性に寄せすぎな気がした。「性欲は異性を買って秘密裏に処理する」、「部下に強引に言うことを聞かせる」、「味方さえも完全には信用しない」、「大義のために利用できるものは何でも利用する」。

机の上の荷物をめちゃくちゃにするところさえ、ステレオタイプな男性のキレ方と同じだ。

多くの女性は彼女の生き方を選ばないであろうことは、最後のエズラの表情が示している。ハイスクールシューティング事件の生き残りである彼女が開始一時間ほどで銃規制反対派に襲われるシーンがこの映画で最も緊迫感のある場面であり、彼女を銃で救う市民フランク・マッギルはまるで『パニッシャー』のようだ(名前もフランクだし)。あのシークエンスだけまるで別の映画のようだが、銃の脅威と必要性がこの上ないインパクトで米国外の観客にも伝わってくる。

プロフェッショナリズムを疑った相手(ジョン・フォード)のプロフェッショナリズム(エスコートサービスの相手の情報は口外しない)に救われるというのは、なかなか胸熱な展開である。聖書の下での宣誓よりも、職業倫理が優先したということで、一線を越えた感がある。

「自分自身を武器にする("Weaponize yourself")」捨て身戦法で、圧倒的な「勝利」を手に入れるリズ。最後は刑務所に収監されているが、試合に負けて勝負に勝ったということなのだろう。

不眠症になるほどにめちゃくちゃな働き方をしていたから、仕事を休みたかったのかもしれないな、と思った。

夜眠れない彼女がジョン・グリシャムを読んでいたのは「眠くなるから」という皮肉か、それとも本当に法廷での闘い方が参考になるから読んでいたのだろうか。彼の本が登場した意味だけはよく分からない。
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