Chiaki

ニーゼと光のアトリエのChiakiのレビュー・感想・評価

ニーゼと光のアトリエ(2015年製作の映画)
3.8
昨年第28回東京国際映画祭コンペ部門東京グランプリ受賞作品。

1940年に実在したブラジルの精神病院が舞台の実話。
当時その病院では医者が患者を人として見ずに行う電気ショック療法などの暴力的な治療が施されていた。以前同じ病院に勤めていた医師、ニーゼ・ダ・シルヴェイラは、その様子に驚愕する。
ニーゼは暴力的な治療を一切拒否し、精神患者に寄り添っていく。そしてある日、病室に患者たちが自由に絵を描くことができるアトリエをオープンする。


上映後には東京国際映画祭の作品選定ディレクターの矢田部さんのトークショーがありました。

矢田部さんによると、この実在したニーゼという女医は、ブラジルでは知る人ぞ知る、というくらいにそこそこ有名な方で、そのニーゼを演じたグロリア・ピレスさんも、ブラジルの超大物女優さんとのこと。
それを聞いてブラジルの『エリン・ブロコビッチ』だ!と思いました。そんな秀作が集まる東京国際はやはりすごい!

更に矢田部さんのお話ですごいと感じたのが、撮影に使われている病院は、舞台の病院の建物をそのまま使用!そして患者役には役者さんだけでなく、本当の精神患者の方も演じられていて、中には当時ニーゼと共に過ごした患者さんが、ご本人役でも登場していたというのだから驚きです。

ニーゼの「自由にさせる」という一つの優しさの形が、徐々に患者や周りの医師たちに受け入れられて、次第にみんなの表情が柔らかく、時に笑顔に変わっていく光景に胸を打たれました。ニーゼと患者たちが作り上げたアトリエは、プロの腕かと思わせる程に美しく、一つひとつの絵が表現力に溢れていました。これも、実際に患者の方が描かれた絵を使用したそうです。

撮影秘話を知るのと知らないのとでは、きっと感じ方が全く違う映画だと思います。本来なら進んで観ることはなかったであろう作品でしたが、こんなにも深く知ることができて、良い機会に巡り会えました(´∀`)


それと、観賞した後にふと、『カッコーの巣の上で』を思い出しました。
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