リンコロシネマ

アウトレイジ 最終章のリンコロシネマのレビュー・感想・評価

アウトレイジ 最終章(2017年製作の映画)
4.1
【塩見三省さん】

シリーズ3作目にして最終章。1作目から続けて観ると連続して登場する人物には感情移入し新たな登場人物にはその役どころに興味が湧く。

この映画で第27回 東京スポーツ映画大賞の主演男優賞に輝いた塩見三省さんに興味を持ち観はじめたので今作品も塩見さん演ずる中田に注目する。

塩見さんは2014年に脳出血して入院。5か月の入院生活後退院。大きな後遺症が残る中、北野武監督に前作に引き続き重要な役どころで大抜擢され(この時のエピソードが泣ける)2017年に公開された。

塩見さんの演技はちょっとした手の動きや顔の表情、喋り方が脳出血を患った患者独特のものであり逆にそれが凄味としてスクリーンに投影されている。

だが、それを一般の人には気づかせないような脚本に仕上げた北野武と北野組:柳島克己のカメラが素晴らしい。

塩見三省が舞台俳優時代の盟友:大杉漣、塩見さんの事務所社長:岸辺一徳には塩見三省さんの著書「歌うように伝えたい」読後ゆえ特別な感情を抱く。

少しは映画の話もしないとね、、、

シリーズ3作通してビートたけし演ずるアウトロー大友の男の生き様にはジャパニーズ・フィルム・ノワールが表現すべきサムライ(=男)の死に際の美学と男と男の特異な関係性が描かれている。それが情けない死に様をする登場人物であるとしてもそこには死を目の前にした男の人間味を感じるのだ。

最終章まで観終えた後、痛烈に感じたのは3部作通してひとつの作品だということ。そして武自身のヤクザ映画への愛別。

シリーズ全作品を通して鈴木慶一の音楽が緊張感を盛り立てていることも特筆に値する。