りょう

彼女がその名を知らない鳥たちのりょうのレビュー・感想・評価

3.6
 沼田まほかるさんの小説は、デビュー作の「九月が永遠に続けば」から読んでいて、この作品の原作もほぼリアルタイムで読んでいました。当時は、湊かなえさんと“イヤミス”小説を競っていた印象があります。
 映画として最初に観たのは5年前くらいでしたが、こういうタイプの作品は、やっぱり結末をわかっていると、その醍醐味が半減してしまうので、あまりいい印象ではありませんでした。
 ただ、原作にこだわらずに冷静に観ると、ありがちな“誰にも共感できない”タイプの作品として、脚色と演出がとてもよかったです。とりわけ蒼井優さんのクズっぷりが秀逸です。あらゆる場面で変幻自在の表情が彼女の心情と身勝手な性格を端的に表現しています。気持ちがよくなるくらいのダメ女でした。
 その彼女を際立たせる男性陣は、俳優としてのパブリックイメージを意識することなく、ダメ男たちをうまく演じていました。阿部サダヲさんの不潔で下品な陣冶は、原作のイメージどおりでしたが、映像的にはやり過ぎではないかと思えるほどです。
 そんな登場人物の魅力で納得させられてしまいますが、彼女たちの犯罪行為を不問にしたままのエンディングは、やっぱりいかがなものかと…。
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