アズマロルヴァケル

ドローン・オブ・クライムのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

ドローン・オブ・クライム(2017年製作の映画)
3.6
下手したら眠たくなりそうな良作

CIAの極秘任務でドローンの操縦士として働いているニール・ウィンストン。極秘任務であるので息子や妻にも言えなかった。

1年前、パキスタンのミランシャーにタリバンが潜伏していたためにタリバンをドローン爆撃で殲滅することになっていた。しかし、その爆撃によってタリバンと共に何も罪もない民間人が犠牲者になっていたのは言うまでもなかった。
現在、その犠牲者の遺族の一人であるイミルがアメリカに来訪していた。男はハッカーで国際安全保障局の情報を流出させ、実際に1年前にあの爆撃をやっていたことを突き止め、そして偶然を装って死んだ祖父の船を買い付けたと言ってウィンストン家に訪ねてくるのであった。


実はこの映画に関しては前半40分はウィンストン家の背景を描き、後半50分でイミルの正体や目的が明かされると共にウィンストン家を襲撃してくるというもので、地味かつスローテンポな展開のために劇場公開の際は観てて寝てしまった人もいる可能性がある。見せ方として似てるとしたら不吉な招待状を機に集団自殺に巻き込まれる「インビテーション」にも似てるような感じで、ハッキリ言えばいつ本題が始まるのやら……。とうずうずしてしまうほどの構成の仕方である。

では、この映画が駄作かと言えばそうではなく、冒頭で1年前の過去のシーンを見せてから本編を見せ、父方の祖父が病気で死んだために弔辞をやらなければいけなかったり、ニールの息子が祖父が心から愛していたり、ちょっと要らないかもしれないけどニールの妻が大学教授とゲス不倫していたりと本題に入る前から色々と人物描写があって面白いと思いました。

ラストに向かっていくと、徐々にイミルが来訪していた理由が明らかになるにつれて不気味さや人間の本質が浮き彫りになり、じわじわじわじわとイミル怖いなぁと感じられ、結果的にニール家がどんな結末を迎えることやらと背筋が凍るわ心臓がドキドキするわで緊迫感はめちゃくちゃありました。

でもって、オチではイミルが復讐目的というよりも別の目的があったことやニールやイミルが戦争にとっての犠牲者に過ぎないという余韻をじわじわと残してくれるのでこれはスリラー映画と戦争映画を見事に調和させてくれたいい良作だと思いましたよ。

ただ、眠たくなりそうな映画なので、そこは他人によっては賛否が分かれるかも……。