りっく

テルマのりっくのレビュー・感想・評価

テルマ(2017年製作の映画)
3.5
北欧の寒々しさ満点の本作は、超能力を持った少女というオカルトホラー的な主人公を中心に据えながらも、彼女の内面を光の点滅といったような外的ショック、あるいは医学的科学的遺伝子学的に解剖しようと試みつつ、彼女が抱える哀しみや恋心といった普遍的感情に寄り添い、観客と共有させてしまう距離感がいい。

また、彼女を中心に据えた物語から、医者であり家族を守る立場である父親、次男を失ったことで自ら命を経とうとした母親が、我が子という得体の知れない生き物とどう向き合えばいいか分からない苦悩や葛藤という、こちらも普遍的な感情を浮き上がらせることに成功している。

終盤に進むにつれ、彼女が見ている光景が過去なのか現在なのか、あるいは現実なのか幻想なのか、まるで劇中で登場する黒い蛇のように彼女の多層的な内面へと入っていく。その出口の見えない、また振り出しに戻っているかのような迷宮感も独特の後味を残す。
りっく

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