りっく

リバー・オブ・グラスのりっくのレビュー・感想・評価

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)
4.1
本作は70年代アメリカン・ニューシネマの匂いを強烈に漂わせながら、あくまでも物語の主語となるのは女性だ。ひとつの拳銃をめぐって犯罪に巻き込まれ、男女で逃避行へと展開するものの、拳銃を紛失した追っ手側であるベテラン刑事のとぼけっぷりも相まって、そこには切迫感はない。

犯罪によって男女が破滅的な恋愛関係を結ぶでもなく、共犯関係になるわけではない。逃避行する車から自ら降りることも、男を降ろすこともできる。まるで海辺の防波堤の上をヨロヨロと歩くように、法という線の上で綱渡りする彼女。だがそれは、怠惰で孤独な人生から自らの意志で自由への契機とするところがいい。自らハンドルを握り、助手席の男に拳銃を放ってドアから下ろし、拳銃を窓から放り投げ、仰ぎ見るだけだったハイウェイからどこかへと車を走らせる幕引きも見事だ。

けたたましいドラム音の連打に重なり合わせるように異なる場所にいる三者を結びつける編集。自然光が中心となる一方で時折印象的に男と女の顔を照らす赤や青の人工的な照明。印象的なアングルからの切れ味の良い画を連ねていく撮影。そのどれもが、ケリー・ライカートの類まれなる才能を証明している。
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