SY3KR

ゴールデン・リバーのSY3KRのレビュー・感想・評価

ゴールデン・リバー(2018年製作の映画)
3.5
寡作だが作品のどれもが脚光を浴びるジャック・オーディアール監督が、これまでとは毛色の違う、ユーモラスな西部劇に挑戦した。

本作では生と死のコントラストが巧みに演出されている。シスターズ兄弟のやり取りは聞いているだけで心地よく、西部劇という型にはまらない軽妙さだ。殺しの対象であったはずのモリスやウォームまで巻き込み、立場も環境も違う4人の間には信じられないほど穏やかな時間が流れる。

その一方で、死は誰も予想のできないタイミングで呆気なく人の命を奪っていく。スヤスヤと眠るイーライに迫る毒蜘蛛には、誰もが怖気を感じたことだろう。凄腕で向かうところ敵なしのシスターズ兄弟が、単なる歯車の1つでしかないことに気付かされるシーンも中々に残酷だ。緩急の付け方が見事で、最後まで気が抜けない。

シスターズ兄弟のキャスティングもハマっている。陽気で残虐なチャーリーを演じるホアキン・フェニックスも相変わらずの上手さだが、MVPはやはり兄のイーライを演じたジョン・C・ライリーだろう。イカつい外見に神経質な性格の変わり者が、彼のパフォーマンスによって生命を吹き込まれ、愛着あるキャラクターに昇華された。

あまりにもオフビートでド派手な盛り上がりに欠け、従来の西部劇のような勧善懲悪的面白さはない。しかし、他には出せない味わい深さの残る一作である。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:87%
・観客支持率 :68%
「本作はお馴染みのジャンルを時には思いもよらない方法で乗りこなし、その満足いく旅は、息の合った主役たちのパフォーマンスで更に高められている」
SY3KR

SY3KR