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人間機械のkoyamaxのレビュー・感想・評価

人間機械(2016年製作の映画)
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ブラック工場の極みは美しい、、、?

インド北西部グジャラード州の繊維工場。
劣悪な環境で働く(幼な子含む)労働者たちの姿をただひたすらに描くドキュメンタリー。

正直にいうと、
とっかかりはまさにディストピア感ある工場の絵面そのもので、
テーマから入るとなると不謹慎野郎そのものの見地にしかなりませんが、
その映像世界はまさに「不快」で「美しい」です。

こんな悲惨な労働環境があるのに!
目を背けていられるのか!
という問題提起は、この映画の裏側には存在しているのですが、、

淡々としたリズムを轟音で刻み続けるインダストリアルな音響
複雑怪奇な迷宮感のある工場内
彩度が低い空間に立ち込める蒸気と
機械から流れ出てくる様々な色彩の生地とのコントラスト

テーマより最初の印象は、
絵がすごい!
音がすごい!
でした。


当事者である労働者、経営者なども出てきますが、
映像を切り取る側が何かを扇動するのではなく、工場の営みを客観的に捉えるところに終始する姿勢が一貫されており、
ひたすらに工場の黒さ、汚れ、音の激しさ等、必要以上に解像度を上げていきます。

工場萌え感を満たすものではあるのですが、

やはりそこに働く人がいる。という事実が、工場萌えを超えた、より鮮明なメッセージとさして浮き彫りになり、

一個人の心情などに留まらない「労働者の強烈な怨念」も見事に映像として捉えているように見えましたね。。。
淡々とした描写が「お分かりいただけただろうか?」という投げかけにつながっていき、最終的に美しさを通して、恐怖感と虚無感まで導いていく手腕はお見事でした。

ただ、映画監督は「救世主」ではないと言い放っているところが、この世界の地獄をより感じさせます。。
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