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ワンダーウーマン 1984のlapin2004のネタバレレビュー・内容・結末

ワンダーウーマン 1984(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

2D吹替にて鑑賞。結論から言うと、コロナ禍による公開延期でパンパンに膨らんで上がりまくったハードルを越える所まではいきませんでした。感想は下記。ネガティブな感想になってしまいましたが、パティ・ジェンキンス監督には正統派本格ヒーロー作品を撮れる監督として期待しています。前作でも感じましたが、女性ならではの視点・演出には良くも悪くも新鮮味があります。


【1984年という舞台設定】
前作では外界から隔絶された環境で育ったダイアナが一般人の暮らす「普通の社会」に踏み入り、そこで起こるギャップが笑いを生んだり、あるいは常識に縛られない言動が感動を生んだ。今回のダイアナは「普通の人間社会で暮らす常識をもった人」であり、70年前の世界から現代(1984年)に現れたスティーブとは関係性が逆になった格好。これがイマイチ笑いや感動につながらなかった。スティーブと現代のギャップはファッションや地下鉄・ジェット機に驚くくらいで、結局前作と同じくスティーブが感情を優先するダイアナを諭すという展開になってしまい、関係性が逆になった面白味を生かしきれなかった。そもそも1984年という舞台設定が作品タイトルに冠するほどには生かされていなかったように思う。

【新要素の登場】
ティアラを使った戦闘、スティーブ・トレバーの出現、ゴールドアーマー、透明ジェット(透明化能力)、飛行能力の獲得、リンダ・カーター、これらの要素の登場が雑で唐突。前作では盾を踏み台にジャンプするだけのアクションでも丁寧な伏線があった。以前コップを消したことがあるから飛行機も消せましたというのを、離陸し始めた段階で言葉だけで済ますのは雑な印象を受ける(しかも現代にはレーダーというものがあって飛んだだけじゃ見つかってしまうという説明から)。透明ジェットは「ジャスティスリーグ 」でやれそうな場面もあったのでやっときゃ良かったのかも。伝説のゴールドアーマーも部屋の隅に適当に包んで置いてあって雑。予告でこのアーマーのビジュアルを見た時に、どんな大冒険の果てにこのアーマーを手に入れるのか(アクアマンのトライデントみたいに)、セミッシラに戻るのではないかとワクワクしていたが、まさか自宅に無造作に置いてあって「あれ何?」「あれはね…」みたいに登場するとは。。リンダはオマケにしてももう少し自然な登場が出来なかったものか。

【過去作とのつながり】
時系列的に『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016年)の30年ほど前ということになるが、やたら前向きマインドな言動が気になった。前作『ワンダーウーマン 』(2017年)では黒幕としてのアレスを倒すも「人間社会の腐敗・堕落・弱さ醜さはアレスのせいというわけではなく人間とはそういうものなんだ」というスティーブの言葉や「人間社会はあなたには値しない」というヒッポリタの言葉が余韻として残り、『BvS』『ジャスティスリーグ 』(2017年)での「人間に失望し人間社会とは今まで距離をもっていた」という後のストーリーにスムーズに繋がっていたと思う。今回はのっけから鮮やかになったコスチュームで子供を救助し悪党退治。テレビ放送で世界に向けて呼びかけたりして、人生って素晴らしい!みたいな前向きなラスト。この後30年の間にまた人間に失望するエピソードがあるということなのだろうか?本作は「ジャスティスリーグ」からの続きみたいな印象だ。「(ズルして)何かを手に入れると何か代償を払う事になる」という本作のシニカルで寓話的なテーマ、再びスティーブを失ったという悲劇性からすると、無理にハッピーエンドっぽくしなくても良かったのではないかと思う。
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