鈴木ピク

霊的ボリシェヴィキの鈴木ピクのレビュー・感想・評価

霊的ボリシェヴィキ(2017年製作の映画)
3.2
「映画美学校」のロゴで始まり、いかにもな廃工場らしき場面に(韓英恵は好きですが)どうにも知らない、半分ほどはあまり華の無い顔の役者が集い、集音マイクとか録音機器とかシネフィル心くすぐりそうな素材が映されetc……「はい、日本のインディーズのこういうやつ」と切って観るのやめたくなってしまったけど、最初に伊藤洋三郎の話す内容が普通に惹きつけられてしまい、そこからこの霊的磁場に取り込まれたと思う。

百物語風に集まった人々がそれぞれ「あの世」と触れ合った体験談を語っていく。その語りに耳を傾け、目を向けることで、「語られているこの場」に異界とつながる瞬間が生成されていく。その強調として「盛り上がる音」さえ比喩ではなく集音マイクの存在で「ここにあるもの」と化すので、本作を映画館で観ていたらここはもう「映画」ではなく「逃れようのない儀式の場」と化しただろう。

ここからあの世に繋がる瞬間を、最終的に「裸足」と「役者の顔」と「窓向こうから差す陽」として描出する。
比喩ではなく、妄想ではなく、映画の中に即物的に異界は捉えられてしまった。
最後に現れるそれが、もはや私たちの知っている「人間」の質感とは思えない。人が映っているのに。
そう思えたのなら、儀式は滞りなく完了です。
鈴木ピク

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