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モリーズ・ゲームのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

モリーズ・ゲーム(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

父親役のケビン・コスナーがいい。

「お前の中毒は〈力を持つ男の支配〉だ」という父親の分析は、さすが心理学者という感じだったが、「お前を怒らせるために言った」とは。

12年前のモーグル中に小枝で転倒したことがすべての原因だと思わないが、人は些細なきっかけで道を踏み外すことがあり得るということか。

スケートリンク脇でのシーンには、何枚もの膜がめくれていく感覚がある。久しぶりに精神分析の面白さを堪能した。

収監を目の前にすること、クライマックスが法廷を舞台としている点は同じ女優の本作2年前の主演映画『女神の見えざる手』と同じ。似たような印象を受けることは避けられない。

モリー・ブルームという名前はジョイスの『ユリシーズ』のレナード・ブルームの妻と同じ。アイリッシュではないがロシア系ユダヤ人であるので、ユダヤ人であることは一致している。

「失敗から失敗へ情熱を失わずに進むこと」というチャーチルの言葉を引用して終わる。この素晴らしい女一代記を失敗/成功みたいなつまらない軸に回収させるんじゃあないよ、アーロン・ソーキンめ、と思った。

ジェシカ・チャステインは知的という以上にしぶとさを感じさせる女優である。彼女のお仕事物映画をハリウッドは年一本くらい製作してほしい。女性映画史へ貢献してるからというのもあるが、なによりも単純にタフな女性が知性を駆使して闘う様は面白いし勇気づけられるから。
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