バナバナ

コレクター 暴かれたナチスの真実のバナバナのレビュー・感想・評価

4.2
Amazonprimeで視聴。
1977年に実際に起きた、第二次世界大戦中ポーランドで村人を虐殺した、ナチス協力者のオランダ人富豪の戦争犯罪裁判の映画化。

1976年、オランダ人貴族の富豪ピーター・メンテンが絵画コレクションを売却する話が世界を賑わす。
その頃、週刊誌“アクセント”の編集長ハンス・クノープの下に、イスラエルの雑誌からその富豪ピーター・メンテンのコレクションは、戦時中にポーランドのユダヤ人画商から巻き上げた作品が多数混じっており、その上メンテンはポーランドで村人の虐殺も行っていた、というネタが入る。
最初は乗り気でなかったクノープだったが、念のためメンテン家を訪れて訪問の意図を話すと、メンテン夫妻の過剰な対応にネタが本当だったと確信し、記事をアクセントにも載せるのだった(あの妻は、ポーランドに残ったメンテンの秘書になった女性かな? だったら黒って分かってるでしょうに、夫婦でコワ!)。

内容が爆弾記事だったため国中を騒がせ、やる気の無かったオランダ司法も1977年にメンテンを起訴することになったのだが、
実はメンテンは、終戦直後もナチス協力者としてオランダで起訴され一旦有罪になったものの、控訴してあらゆる人間を買収したのか逆転無罪を勝ち取ちとり、オランダとドイツ政府から多額の賠償金を受け取っていたのだ。
そして、その当時の裁判長や検事が地位と名誉をそのせいで奪われていたので、クノープも「お前もそうなるぞ!」とメンテンに脅される。

ここから状況が二転三転するので面白い。
ポーランドでれっきとした証拠が出てくるのだが、それでもオランダ司法や、アクセントの親会社の新聞社“デ・テレグラーフ”は、オランダでユダヤ人が殺された訳ではないのだから、と及び腰だ。
この事件にクノープが肩入れし過ぎるのは彼がユダヤ人だからと揶揄されたり、まさかまさかの裏切りもあり、どんどん追い詰められるクノープだったが、最後に切り札が証言するのだった…。

日本は終戦直後の戦争裁判以外に、戦争犯罪で訴えられた人はいないよね?
まあ民間人が直接地元の人を殺すことは、さすがに無かったと思うのだが。
クノープが検事局と直接情報のやりとりをしていたのは、映画だから分かりやすく…ということだったのかな?
メンテンが1949年に一度逆転無罪になっているのに、1977年に再起訴できたのは、罪状がもっと詳しく限定する事ができたからなのだろうか?
映画ではそこまで映してなかったが、裁判が二転三転した後に、怒ったオランダ国民がこれはひどいとデモを起こしたため、最終的にオランダ検事局がメンテンを上告して裁判を続けたのだそうだ。

クノープはユダヤ人で、イスラエルの反共産組織にも加盟していたそうなので、
『アイヒマンを追え! ナチスが最も畏れた男』の西ドイツ検事局長フリッツ・バウアーみたいに、メンテンをイスラエルに売っちゃえば?と思ったのだが、
1960年のアイヒマン誘拐とは違い、この頃は1970年後半だから、他国から容疑者を誘拐するなどという荒っぽい行為は、もうイスラエルも出来なかったのだろうか。
しかし、『ミュンヘン』では、1972年のミュンヘンオリンピックで選手を惨殺されたイスラエルが、パレスチナ過激派幹部掃討のために海外に殺し屋を送り込んでいたのだが…。

オランダの新聞社も、売れる記事のネタにはすぐ飛び付くくせに、両天秤なところがズルい。やっぱりこういうのはどこの国も同じか。
こんなにたくさん生存者が出廷して証言して、しっかりした証拠もあるというのに、これでもまだ二転三転するのかとビックリな展開だったが、本当に裁判がこういう流れだったそうで、史実通り忠実に映画化されていて凄いと思いました。
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