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悲しみに、こんにちはのKotaのレビュー・感想・評価

悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)
3.8
“だれも私の事を好きじゃない。–私は好きだよ。”

“1993年夏。それは私のママがエイズで死んで田舎の叔父母の家に引き取られた時。“監督の実体験に基づく話。繊細で残酷。大人も子供も関係ない人間の弱さとそれを克服して(我慢して)生きていくこの世界で当たり前のように起きている事の映像化。

美しいカタルーニャの眩しい日差しの下、細かいカット割りにより進むストーリーは“君の名前で僕を呼んで”のそれに似ているし、テイストとして子供目線の世界を描くのは“フロリダプロジェクト”。愚痴をこぼしたと思ったら次のシーンでは何事もなかったのごとく振る舞う、それが人間。

涙の理由は描かれない。でもこれを観た全ての人は“それぞれ“のいつかの思い出を思い出して泣いてしまうんだろうな。私たちは様々な理由で自分にとってベストではない人生を送っている。そして気づかぬうちにその想いを殺している。この物語に共感するというよりはそんな普遍的な事を考えさせてくれる素晴らしい映画でした。
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