kazu1961

橋のない川のkazu1961のレビュー・感想・評価

橋のない川(1969年製作の映画)
4.2
▪️Title :「橋のない川(1969)」
Original Title :※※※
▪️Release Date:1969/02/01
▪️Production Country:日本
🏆Main Awards :※※※
▪️Appreciation Record :2019-146 再鑑賞
▪️My Review
「橋のない川」。神戸出身の私にとっては子供のころ、道徳の授業で幾度か鑑賞する機会がありました。「差別はやめよう!」それだけを授業で教えられた印象でしたが、大人になってから初めて再鑑賞しましたがいろんな意味で感じるところが大きく違いました。そんな簡単な問題ではないですね。。
本作には大きく分けて2つの映画版が存在します。1969年から1970年に今井正が監督を務めた映画(「第一部」「第二部」の2本)と、1992年に東陽一が監督を務め、ガレリア・西友共同で製作された映画です。撮影中止騒動など、何かと物議を醸すのはこちらの今井版ですね。
そして、この作品はやはり名作・傑作だと思います。当時(1910年前後)の部落と部落差別のありようが生き生きと表現され、部落差別というものがどういうものであるのか、それを具体的に様々な場面、普段の生活の中の出来事を通して見事に描き出しています。差別をする側の心根の卑しさ、人間としての卑小さ、その一方で、有無を言わせない迫害や幾重にものしかかる圧迫に耐えつつ、心を鍛えていく者、その対比の鮮やかさはしたたかに心を打ち、何とも言えない思いを呼び起こします。
今の若い世代の人たちにとっては教科書中にある記述のみでしか知る機会が無い「部落問題」の実態をリアリティをもって見事に描いています。
とは言え、陰惨な雰囲気ばかりが漂う物語というわけではなく、観る者に生きる活力を与えるような作品となっているんではないでしょうか。
▪️Overview
往井すゑの原作(新潮社刊)を八木保太郎が脚色、今井正が監督した社会劇。社会主義リアリズムの巨匠であった今井が自ら映画化を企画し、大手製作会社に断られるなどの苦労の末に完成にこぎつけた。第一部は当初部落解放同盟の推薦を受けた作品でもあります。出演は長山藍子、北林谷栄、高宮克弥、大川淳、伊藤雄之助、阿部寿美子、島田洋子など。
kazu1961

kazu1961