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老人ファームのkmiwのレビュー・感想・評価

老人ファーム(2019年製作の映画)
3.2
ジム・ジャームッシュあたりのアート系シネマかと思うようなジャケ写だが、かなりドメスティックな邦画。

老人ホームならぬ老人ファームである。

楽しいか楽しくないか、面白いかどうかでいうと、どちらかといえば終始嫌な感じの作品。主人公の笑顔を見てると不安な気持ちになってくる。ねぇ、大丈夫?無理しないでって、声をかけたくなってくる。

母の病をきっかけに仕事を辞め故郷のホームで働くことになった主人公。
最初は高齢者たちの生活を向上させるべく仕事に勤しんでいるのだが、様々過酷な経験を経て徐々に内面に変化がみられるようになる。
そしてある事件をきっかけに過激な行動に出るようになるのだが、というストーリーである。

主人公は、一見良さそうな人なのである。穏やかな表情で、汚れ仕事などもこなし、老人が喜ぶならと多少のルール違反をおかしたりもする(プリンを買ってきてあげる、という程度だが)

だがその良い人ぶりは、本当の問題解決につながることを避けるための、差し障りのなさが根っこだ。
深刻な事態が続くとあっという間に仮面にヒビが入り、どす黒さが顔をのぞかせる。
これは彼の性質だけの問題かというとそうでもなく、老人ホームというか、介護職全般またはサービス業もふくめ、さらには日本の空気感、過剰に相手方に合わせようとする気質かな、そういうものが彼個人を追い詰めていく様を見せつけてくる。
個人的な問題を描いているようでいて、もっと大きな所を目指していると思われる意欲的な作品だ。

でも少し荒削り。表現不足。監督と脚本はご兄弟で、組んで仕事をなさるようだ。
ノーラン兄弟のように成れるよう、がんばって欲しい。
また、主役演ずる半田周平は、今後ばけるんじゃないだろうか。ちょっと追いたい俳優さんだ。

老人ホームの描写は若干辛いな。全部が全部ああではないと思うが、大間違いではないだろう。自分の行く末とか考えちゃうよね。
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