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Dark River(原題)のSY3KRのレビュー・感想・評価

Dark River(原題)(2017年製作の映画)
3.5
父親の死を知った主人公アリスは、死後は自身に牧場を譲るという遺言を頼みに、長年避けてきた故郷へと戻る。久しぶりに顔を合わせた兄ジョーとの間には緊張が走るが、それは遺言の公開、そしてアリスが帰省を避けてきた理由の暴露と共に激しい衝突へと変わって…というのが大まかなあらすじ。

問題のアリスが故郷や父を避けてきた理由だが、これは開幕早々に過去の回想シーンによって明らかになる。舞台となるノース・ヨークシャー州のマルハムは人口わずか220人の片田舎で、全員が顔見知り。彼女が故郷を飛び出さざるを得なかったことは容易に想像がつく。

帰省してからも閉鎖的な環境ならではの陰湿さが彼女の心を蝕み、常にどんよりと曇った気候のせいで気分はまるで晴れない。癒えない傷口に塩を塗り込みながらも、家族との繋がりを取り戻したいという信念を見せるアリス。

それに対するジョーは明らかに家やこの地を憎んでおり、彼女に対して敵意をむき出しにする。ジョーにとってアリスは自らの無力さを思い知らせる存在であり、自己否定の象徴である。そのネガティブな感情を怒りに変えて放出することしかできないため、状況はますます悪化するばかりだ。

本作の魅力は、この熾烈な感情のぶつかり合いを迫真の演技で見せた、ルース・ウィルソンとマーク・スタンリーによる所が大きい。変化していく2人の関係性をじっくりと捉えた演出も見事で、クリオ・バーナード監督がケン・ローチの影響を受けているというのもなんとなく納得だ。

あまりに地味で今後も日本公開はないと思うが、バーナード監督の作品には今後も注目したいと思わせられた一作。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:82%
・観客支持率 :62%
「本作はそのタイトルから連想されるように殺伐とした作品だ。だが、しっかりと練られたキャラクターとルース・ウィルソンの卓越したパフォーマンスは、川に飛び込んででも見る価値がある。」
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