あかっか

万引き家族のあかっかのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
5.0
2018年6月12日 鑑賞

結論から先に書くと個人的には大傑作でした!是枝監督の真骨頂かつ現時点での集大成って感じですね。冒頭から是枝節というか「あ~、是枝監督の作品観てる!」って感じしかしません。

万引きで生計を立てる家族。その家族のそれぞれに隠された秘密。家族とは、親とは、絆とは・・・を強烈かつ静かに訴えかけます。

最近の虐待死の事件もあって、冒頭から何とも言えない気持ちになり、その気持ちはやがて万引きや車上荒らしといった犯罪によって生計を立てている『万引き家族』を擁護したくなってきます。そして、秘密が明かされて行くと共に、『家族』の在り方を観客に突き付けてきます。

是枝作品って、結構『何も起きない』んですよね。今作もかなり長い時間を使って『万引き家族』の生活を淡々と映し出します。それがあまりにも自然で、まるでドキュメンタリーを観ているような気になる。まさに是枝節です。

ただ常に『一寸先は・・・』という不穏な空気をまとっています。あることを切欠に物語が急展開しますが、まさに今作はそこからが肝で、血の繋がりのない者同士が家族たり得るのか?また、血の繋がりだけで親子や家族といえるのか?を問うてきます。

僕が思ったのはこの『万引き家族』というのは、あくまでも『万引き』つまり黙って連れて来ちゃった『誰のものでもないもの』(これは劇中で万引きを肯定する際のセリフとして語られていた)で形成される家族であり、本物の家族ではない。いわばお互いの傷を癒し合う関係性で成り立っていて、それ故に異常に優しい良い家族に見える。だって、本物の家族って『傷つけ合うこと』も多々あるじゃないですか?痛いところをバシバシ突いてきたリ・・・。なので、この家族は(あくまで映画の中での)『最後』まで本物の家族になれなかった気がします。

あと名前や呼び名というものが、如何に大事であるか。言霊ではないけど、その部分も非常に考えさせられました。

是枝監督はあえて答えを出さない作品が多く、今作も明確な答えは示してません。ただ、最後に二人の子供が言った言葉と歌(祥太に関しては口の動きのみ)が一つの答えになっているんでしょう。

『誰も知らない』、『そして、父になる』、『海街diary』、『万引き家族』の順番で観て行くと、より深く監督の意図が見える気がします。
あかっか

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