りっく

クリード 炎の宿敵のりっくのレビュー・感想・評価

クリード 炎の宿敵(2018年製作の映画)
3.9
シリーズが長年続いているからこそ、息子の代まで受け継がれた宿命、因縁、悲劇に厚みと重みが生まれる。特に本作は、スタローンとラングレンの老いてもなお貫禄と哀愁たっぷりの肉体によって、それがより強固になっている。

勝者側の栄光の物語の影に横たわる、敗者側の屈辱の物語。一度負ければ手のひらを返され奈落の底に突き落とされる。そんな泥にまみれた野良犬のように貧困の中で機会をうかがう、ドラコ父子の物語にも共感できる作りとなっている。

そして、時を超えて両者は再びリングで拳を合わせる。ここでドラコが反則負けになり王者は守るものの、クリードも弱いチャンピオンという位置まで落とすことで、クライマックスで敗者同士の物語となり、一度泥水を飲んだ同士として殴り合うことで、そこで新たなドラマが生まれる構成となっている。

長年の宿命へのケジメ。各々のアイデンティティを確かめ認め合う迫力の試合。殴り殴られ血しぶきが上がり、血で染まったタオルがリングに投げ込まれる。その「血」を濃厚に意識させ、家族の物語へと帰結させる脚本はこの上ないものだ。だからこそ、ドラコ父子は、元妻かつ母親を再び失望させ途中退場する光景が、血縁の対決では致命傷になる。

ラストの試合の場面はスタローンが的確に指示をし形勢を優位に進める序盤、そして中盤から終盤にかけてはドラコ側が最長で4ラウンドしか戦ったことがないという経験不足による体力不足のため、クリードが一気に勝利へと駆け上がる。強いて言えば、ドラコ側の積年の執念や意地をもう少し見たかったというのは贅沢だろうか。
りっく

りっく