ひゅうどんこ

希望の灯りのひゅうどんこのレビュー・感想・評価

希望の灯り(2018年製作の映画)
4.0
◎独🇩🇪原題『In den Gängen』の意味は「通路(複数形)にて」らしい。英語圏公開時タイトル『In The Aisles』の意味もほぼ同様らしい。

 原作はクレメンス・マイヤーの短編集の一編から。
ベルリンの壁崩壊後、西側の自由主義経済に乗りきれない旧東ドイツだった地域に暮らす人々を綴ったその本のタイトル『夜と灯りと』から考えてみれば、この邦題はいい線いってると思います。

 クリスティアンを演じるフランツ・ロゴフスキは、大きい劇場や舞台で振付け師をやってた人。チンピラやってて倉庫係になったという設定にしちゃあ、、あの筋肉のつき方は確かにそうだわな。

 まあとにかくセリフや文字で多くを語らない映画。主人公にいたっては、あまりにも喋らないので、細部の変化で感情を推し量るしかありません。よって「説明が足りない」といった表現をレビューで使いがちな方には不向き。

 ロケ地は、ザクセン州(Saxony)のライプツィヒ(Leipzig)、ザクセン=アンハルト州(Saxony-Anhalt)のビターフェルト(Bitterfeld)やヴィッテンベルク(Wittenberg)、バーデン=ヴュルテンベルク州の(Baden-Württemberg)のカールスルーエ(Karlsruhe)など。カールスルーエ以外は旧東側陣営だったところ。
 トーマス・ステューバー監督もライプツィヒ生まれで、色んな肉体労働を経験してるそうですから、中編映画も含め原作者クレメンス・マイヤーと組むのは3度目の本作、良い方向に作用したことでしょう。

 展開と共に変化する音楽も、人物達の心情を読む材料に。
「♪都会では自殺する若者が増えている」と歌っている歌手があったけれど、東西統一の歪みは、私たちが考えてるより今もって深刻かもしれません。

 最後に私の無知ぶりを晒して終わりたいと思います。
Q:いわゆる「ベルリンの壁」は東西ドイツ間にそびえていた両者を断絶する国境の壁であった⁉️
         👇️
A:ブッブー 不正解❌。正解は西ベルリンを28年間取り囲んでいた、東ベルリン市民の流出を防ぐための壁のこと⭕。
ドイツ帝国の首都だった旨味あるベルリンをソ連だけに渡してなるものかーと、第二次大戦後ベルリンの東側はソ連が、西側はフランス/イギリス/アメリカが分割して管理に乗り出してくるかなり胸くそ悪い経緯あり。
結果「西の方がいいじゃん」→大量に東ベルリンの方々が西ベルリンへと越境→ソ連ぶちギレ→ある日一夜にして西ベルリンの周りに有刺鉄線が出現→それが順次壁の建設となる→28年後或る政治家の勘違いによって一気に瓦解するまで続いた。。ざっくり書くとこんな感じ。
 近代世界史の時間=睡眠学習😪されてた方がいらっしゃいましたら、コッソリご参考にして下さいませ。