あなぐらむ

おさな妻の告白 衝撃 ショックのあなぐらむのレビュー・感想・評価

3.9
シネロマン池袋で鑑賞。
片桐夕子が薄幸な天使オーラを目映いばかりに炸裂させる、いどあきお脚本作。男性の持つ娼婦/聖女幻想みたいなものを片桐夕子が見事に体現、敵役となる山科ゆりのクールな美しさと冷淡が綺麗に対をなす。

これはやはり「狂った果実」から続く日活DNAを正しく受け継ぐ青春映画であり、西村監督自身の「帰ってきた狼」の異本かもしれない。
ゴールデン街の汚れれば汚れる程清く輝くちょっと頭の弱い女を、山科ゆりもまた「真夜中の妖精」で演じる事になる。

安藤庄平の撮影の、どんな些細なカットさえ工夫し、動かずにおかない画面設計が奥行きある映画空間を創造する。風吹きすさぶゴールデン街での金網越しのラブシーンはまさに「映画的」。ヤリ場であるバー、主人公の車庫上の部屋など「階段のある美術」も日活の伝統であり素晴らしい。
キワモノ的な評価が多い西村昭五郎だが、学生時代に色街に入り浸っていたという彼の娼婦を視る眼差しは限りなく優しく、中平組、今村組で鍛えた女性映画の資質、技術はロジックに落ち易い田中登にはない大人の味わいがある。これは名品。ありがとうシネロマンさん。
なお、「おさな妻の告白 陶酔」は正調続編。