りっく

21世紀の女の子のりっくのレビュー・感想・評価

21世紀の女の子(2018年製作の映画)
3.7
ジェンダーやセクシャリティーの揺らぎをテーマにそれぞれの筆跡筆圧で各章を綴られたオムニバスは、ラストに母なる存在と化した教祖の山戸監督がまとめ上げ、聖典が完成する印象さえも受ける。

作品を貫くテーマはありつつも、徐々に孤独で窮屈で淋しがり屋である人間というものの本質を掴もうと試みる普遍性がある。だが、モノローグの多様、早いカッティング、音楽と映像のシンクロ感はまさに21世紀の映画であり、同時にファッションとしての映画と捉えられ没個性的に見える。

逆にきちんとストーリーをオーソドックスに語る枝優香や松本花奈やふくだももこが印象に残る。また旬の若手女優を起用したこともあり、劇中の小道具としてのカメラも含めて、人間の本質を覗き込み、同時にこの唯一無二の瞬間を閉じ込めようという意志がどの作品からも感じられる。

だが、他作品と条件が同じであることで余計にラストを飾る山戸結希の才能が明らかに突出していることが浮き彫りになる。地球ではないどこかで、女性と神と映画の三位一体の世界は、山戸流のエデンの園。観客はただただ為すがままに誘われるのみである。

そこで山戸監督が信じている想いがモノローグとテロップと唐田えりかをはじめ3人の女優の身体を通して炸裂する。8分間という限られだ尺だからこそ過去作よりも濃縮された密度とスピードは、作風含め彼女が尊敬する映画作家である大林宣彦「花筐」を思い起こす。
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