とぶとかげ

ピータールー マンチェスターの悲劇/ピータールーの虐殺のとぶとかげのレビュー・感想・評価

3.6
マンチェスターのある一家、特にナポレオン戦争帰りの息子(wikiによると彼は実際のこの事件での被害者ジョン・リーズがモデルと思われる)を中心に、多くの人間の思惑や動きを絡めながら、公平な選挙と悪法である穀物法の廃止を求めて行動を起こした労働者たちの姿とその悲劇を、美しく重厚な映像で描く。

19世紀初頭のイギリスの庶民の暮らしのリアリティが素晴らしく、また北部イングランドの自然もとても美しい。抗議してもどうせ何も変わらないと懐疑的だった人々が、なけなしの一張羅を着て帽子に月桂樹の枝を刺し、集会に集まってくる。特に女性は皆白いドレスに身を包み、晴れがましい表情で…その描写がより後の悲劇を際立たせる。

一方、王族や議員、官僚、資本家の描写は俗っぽくカリカチュアされていて、そこはちょっと物足りなく感じた。だが生まれた時から当たり前のように選挙権がある私達が、この映画を今観る意味は決して小さくはない。劇中の「権利は与えられるものではない。生まれた時から持っているものなのだ」というセリフが胸に響いた。