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幸福なラザロのkogureawesomeのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
3.1
「幸福な王子」という童話の王子は博愛の精神で自分の持っているものを与え最後には全てを失いみすぼらしい姿になるが、
「幸福なラザロ」もあまり幸福そうには見えない。
20世紀後半。社会と隔絶されたイタリアの小さな農村で純朴なラザロ達が働く広大なタバコ農園。昭和なのに、まるで明治時代のようだ。
小作制度の廃止を隠蔽する侯爵夫人に騙され、不当な待遇を受けていた彼らは外からの情報を得ることができず、こどもたちも義務教育を受けられるにもかかわらず学校に行けていない。
その村に伯爵夫人の息子が入って来る時の違和感。何しろスティングとデヴィッド・ボウイを足してガリガリにしたようなパンキッシュな兄ちゃんが明治時代の風景に入り込んでくるからだ。
映画の後半は一転して令和の今が舞台になる。

主人公のラザロは怒らない、恨まない、疑わない聖なる愚者のようだ。聖書に出て来るラザロがキャラクターの原典にあるらしい。富める者と貧しい者との違いを表す象徴としての人物、そしてキリストが奇跡によって甦らせたキリストの友人。

監督はアリーチェロルヴァケル 。1982年生まれの女性で、風格のある絵作りが既に巨匠の予感。前作ではカンヌ映画祭グランプリを受賞している。今作もカンヌ映画祭で脚本賞を獲得している。(ちなみにグランプリを争ったのは日本映画『万引き家族』)
観ながらいろいろな映画を思い出した。
例えば
『裁かるゞジャンヌ』、
『木靴の樹』、『神の道化師フランチェスコ』、『アンダーグラウンド』、
キアロスタミ映画などだ。
私は特に映画の前半が好きだった。
また本作はイタリアで実際に起こった詐欺事件にインスパイアされた映画でもある。

過去鑑賞。
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