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美と殺戮のすべてのkogureawesomeのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
4.1

ナン・ゴールディンはアメリカの写真家だ。

写真、自主制作、芸術、セックスワーク、LGBT、エイズ、私生活、友達、ジム・ジャームッシュ、渋川清彦、荒木経惟、薬害、薬物依存、差別偏見、抗議、政治、裁判、グリーフ、子供時代、青春の80年代、90年代、そして今、自分スケールの闘い、どれもナン・ゴールディンには同じレベルで日常にある。
それぞれ分けてない、つながっている。

ナン・ゴールディン は2023年、イギリスの現代美術雑誌『ArtReview』によるアート界でもっとも影響力のある100組のランキング「Power 100」で1位に輝いている。

無関心。全世界のすべてに関心を持つことは不可能だと思うけれど、無関心が怖いことだということも忘れたくない。

手術時にオピオイド系の鎮痛剤オキシコンチンを投与されて中毒となり生死の境をさまよったナン・ゴールディンは2017年に支援団体P.A.I.N.を創設。オキシコンチンを販売する製薬会社パーデュー・ファーマ社とそのオーナーである大富豪サックラー家、そしてサックラー家から多額の寄付を受けた芸術界の責任を追及していく。アメリカでは、オキシコンチンが原因で過去20年の間に50万人が亡くなり社会問題になっているという。

ナンが緊張と恐怖と怒りで震える手を握ってもらいながらサックラー一族にオンラインではあるが面と向かって話すシーンは、通さないとならない筋はあると言っているように聞こえた。

このドキュメンタリーの半分はナン・ゴールディンの半生を紐解いていく。

18才で亡くなった姉。そして家族の「隠すことによって無かったことにする」空気、ふるまい。

本当に病院に行かなくてはならなかったのは誰だったのか。

このドキュメンタリーは2022年・第79回ヴェネチア国際映画祭にて最高賞の金獅子賞を受賞した。

めちゃくちゃおススメです。

昔持ってたけど、売っちゃったナン・ゴールディンの写真集『性的依存のバラード』、また欲しいなぁと思って調べたらめっちゃ高いじゃねーか。うう。
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