りっく

七つの会議のりっくのレビュー・感想・評価

七つの会議(2018年製作の映画)
4.5
山一証券に代表されるように、日本の会社の体質にメスを入れ、そこにドロドロと流れるどす黒い血を浴びながら、縦割り行政、お上への忖度、隠蔽と左遷、責任転嫁を繰り返す平成日本の空気感を、適度にカリカチュアしながらエンターテイメントに昇華した見事な一作であり、分かりやすいカタルシスに逃げない作りも、会社人間ではなく一個人としての善悪や倫理といった生き方を問う姿勢も誠実。「たかが、ネジ一個」と思ってしまうような根本の問題のレベル設定も見事。

左遷され責任を一手に背負わされた片岡愛之助の代わりに営業一課課長に就任した及川光博と社員の朝倉あきが、組織が隠蔽している真実に迫る前半はまるで刑事が謎に迫っていくミステリーものでありバディものでもあるが、課長職の人間にこの役割を担わせるのはリアリティにかけやや難あり。それでもテンポよく進行していく。

そして中盤から後半にかけて、怠け者社員であるように見える野村萬斎と、同期で出世街道に乗った悪役のように見える香川照之。人生のあるポイントで会社の言いなりになる人生と正義を貫く人生の分岐点が、また手を握り共闘する展開は目頭が熱くなる。

出世することがステータスだった会社人生に疑問符を投げかける、自らの価値観の転換、自分の人生の否定。そこから真人間として生きようとする姿に心打たれる。
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