りっく

夜明けのりっくのレビュー・感想・評価

夜明け(2019年製作の映画)
3.3
是枝裕和、西川美和作品に携わり、満を持してデビューを果たした分福所属の広瀬監督の手腕は、確かに柳楽優弥にオーバーアクトをさせず、彼が演じる主人公の心の機微に寄り添うような丁寧な脚本が光っている。特に自分を拾ってくれた小林薫演じる棟梁の亡き息子の幻影を埋める存在から解き放たれるために髪の色を洗面所で染め直す場面は見事。

一方でキャメラマンがドキュメンタリー畑で初の商業映画であることも関係しているのか、映画的な画で物語を語っていく点が非常に物足りないため、ロケーションはいいものの全体的にのっぺりした印象を受ける。

ラストもタイトルにもある「夜明け」をどうキャメラに収めるかが本作の肝であるが、朝焼けに照らされた柳楽優弥のアップはいいものの、その後に波打つ海を漠然と映してしまい、いい意味でも悪い意味でもオーソドックスで凡庸な仕上がりだと感じてしまうのが惜しい。
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