Habby中野

劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~のHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

アニメ一気見した時も感じたけどユーフォシリーズの、群像劇には止まらないレイヤーの多さ(絵のではなく)とそのレベルの深さ、一人一人の存在とその自立への尊厳の眼差しは半端じゃなくすごい。「で、自分らどうするん?」(『君たちはどう生きるか』のタイトルを覚え違いしていた友人の言葉から引用)を次から次へと突きつけてくる。主人公不在の物語。
主眼となる一年生の入部から描いたテレビシリーズでの外─内の物語から、どんどんどんどん、内へ内へと向かっていく。主眼が変わらぬまま二年目になったことや映画という短尺で描くことにもよるだろうが、この上ない内の世界で多重にストーリーが生まれ進んでいく。視聴者が「部活ってこんなだったね」とかで感じるのをもはや超えているこの重み。悪夢に近い、穴に落ちていく感覚さえある。
唯一、外との接触は今はまだない「将来」という概念で唐突になされる。それは希望的な語りでは決してなく、しかも何かが明るく開けるとかの進捗もなく、ただ語られるだけで終わる。内へとひた向かう物語と、語られるだけで結論のない将来。まるで、すべてが本当の、現実の高校生たちの部活を魂ごと覗いているかのようなリアリティが、肌に当たる蒸し蒸しした空気があるみたい。語り手はその物語そのものだ。
この、求心的なストーリーではない、その場にいた様々な人の体験を全員でひとまとめにしたかのような、神なき、あるいは多神的な世界の語りを象徴する最も無力で、最も強く、最も「性格が悪い」、魅力的でもあまりない主役がこの先へどう歩むのか、3期の終わり方がこれから楽しみ。
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