故国アイスランドで作品を発表し続けるハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン監督が手がけたサスペンス。
アイスランド制作の映画を見る機会は中々なく、非常に新鮮でいつも以上に異国気分を味わうことができた。主人公のアトリが娘とピクニックをするためIKEAにやってくるシーンでは、あまりの敷地面積のデカさに笑ってしまう。夕方になっても陽が沈まず明るいままなのは、白夜の影響が大きいのだろう。
野良犬による寄生虫被害が蔓延したため、アイスランドでは1984年まで犬の飼育が禁じられていた。今でも猫を飼う人が大多数で、隣人に対する母親インガの反応はごく自然なものである。こうして異文化や習慣を発見できるのも、映画の楽しみ方の1つに違いない。
些細なすれ違いが大きな悲劇に発展していくイヤミス的展開もよく考えられており、序盤の地味なフラストレーションの連続にはこちらもイライラが止まらない。特にアトリが奥さんを幼稚園で待ち伏せするシーンには、苦笑してしまった。ダメな時は何をやっても上手くいかない人生の不条理さを浮き彫りにした名シーンだろう。
個人的にはこうしたストレスを蓄積させ終盤に爆発させて欲しかったのだが、母親のインガがケタ外れの狂人で全てをぶっ壊している。こんな危ない人間が隣にいたら、もはや幸も不幸も関係ない。最終的に「ハズレの隣人を引いた」だけの浅い話になったように感じるのが、残念だ。
⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:85%
・観客支持率 :62%
「本作は観客を極めてダークな領域へと誘うが、狡猾な知性と驚くべきユーモアのセンスによって、その雰囲気を和らげている」