りっく

ラ・ポワント・クールトのりっくのレビュー・感想・評価

ラ・ポワント・クールト(1955年製作の映画)
3.7
まず漁村の風景とそこに息づく人々の様子の切り取り方が見事。キャメラがどんどん家の中へと入っていき、人々のを次々に映していく。そこにプライベートな空間はほぼなく、敷居をまたぐといった概念もなさそうだ。随所に挟み込まれる干されて風になびく洗濯物の数々が、漁村の風景を迷路のようでいて、覗き見ることもできる場所だと印象づける。

そんな風景で生きてきた夫の故郷を、よそ者の妻が訪ねる。物語の中心はこの二人であるものの、他の村人たちの話も点描することで、あくまでも漁村にいるふたりであることが強調される。そこを人情味あふれる場所だと捉えるか、窮屈で退屈な場所だと捉えるか。妻の表情や台詞から醸し出されるニュアンスを能動的に読み取ることになる。

アニエス・ヴァルダの画の切り取り方、水辺の風景の多用さ、カットとカットを運動で繋いでいく美しい流れの中に突如出現する構図の強度も素晴らしい。
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