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キンダーガーテン・ティーチャーのSY3KRのレビュー・感想・評価

4.0
幼稚園教諭のリサは平凡な毎日に鬱屈とした思いを抱えながら生きていた。趣味で詩作を始めるが、これも上手くいかない。そんな折、園児のジミーがふと口にした詩にリサは感銘を受ける。それをクラブで披露したところ絶賛を浴びたため、彼女はジミーの才能を世に埋もれさせてはならないと躍起になる…というあらすじ。

オリジナルは2014年に公開されたイスラエル映画で、本作はそのリメイクとなる。アメリカ版ネットフリックスを経由しない限り、日本では現状見る手段がない。

リサの感じる閉塞感にとにかく共感させられる一作だ。人は誰しも挫折を味わいながら生きていくが、自分が天才ではなく凡人だと思い知る瞬間の苦痛は言葉にならないものがある。リサにそれを悟らせるのがまだ幼いジミーなのだから、こんなに残酷な話はない。

リサにとって幼稚園の先生は天職だと思うし、彼女の言葉や態度を見れば、いかに子どもたちを愛しているかは十分伝わってくる。しかしリサのジミーへの愛情は次第に逸脱し、愛憎蠢く身勝手な使命感へと形を変えていくのだ。これがおぞましいと同時に謎のシンパシーを生む。

彼女がこうなってしまった理由の1つは、間違いなく家庭での居場所のなさだ。決して不幸な家庭ではないが、ちょっとした思いやりのなさや言葉の刃が、彼女の自己肯定感をじわじわと削り取っていく。こうした確かな演出にマジー・ジレンホール迫真の演技が加わり、90分程度のランタイムとは思えない見応えだった。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:90%
・観客支持率 :67%
「マギー・ジレンホールの堂々たる演技に支えられた本作は、2度目のリメイクにも関わらずその衝撃を失っていない。」
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