KUBO

虐待の証明/ミス・ペクのKUBOのレビュー・感想・評価

虐待の証明/ミス・ペク(2018年製作の映画)
3.8
「生まれてきてごめんなさい」この台詞で感極まった。

日本でも虐待の末に子供を殺してしまう悲惨な事件が起きているが、本作はまさにそういう「虐待」を真正面から描いた作品だ。

しかも「実話に基づく」作品だというのも衝撃的。実際には複数の虐待事件を元に、ということでどこからどこまでが実話なのかは定かではないが、見ていられないような凄惨な暴力が描かれているので、見る前に覚悟はいる。

内縁の妻を水商売で働かせ、自分は日がな一日ゲーム三昧の子供のままの父親。この2人が、父親が前妻との間に作った娘を邪魔にして、氷点下のベランダに放置したり、殴る蹴るの毎日。

主人公のミス・ペグは、自らも虐待された過去を持つ女性で、この少女の境遇と自分の過去を重ねて助けの手を伸ばそうとする。

あからさまなネグレクト&虐待だから、スマートに対応すればもっとスムーズに救えると思うんだけど、ミス・ペグが共感力強すぎてエキサイトしちゃうのと、かつてレイプ事件で犯人に負わせた怪我が正当防衛と認められずに前科者になっていたことから、警察に信じてもらえずに、余計事件は複雑になっていく。

さらにいうと、どうしてこう警察や児相は逃げ腰かね? 君たちがもう一歩踏み込んでてくれれば、ってイライラさせられた。日本もあんな事件が起きるんだから同じようなもんかもしれないけど、韓国の方がやや酷いんだろうな。

前半は凄惨な虐待シーンのオンパレードで見ているのも辛いが、さすが韓国映画、後半はしっかりサスペンス風に盛り上げて、希望のあるラストもGOOD!

私は子供が大好きで、こんな小さきものに暴力をふるう奴には虫唾が走るけど、私は自分の子供を虐待して殺すなんてことは自殺と同じだと思ってる。

人はいつか必ず死ぬけど、子どもさえいれば血脈は途絶えない。それが永遠の命であると思ってるのね。だから自分のDNAを自ら絶やすことは自死にも等しいと思うのですよ。

主人公のミス・ペグは、自らの辛い経験から少女を救おうとするが、虐待をしていた父親は、自分も虐待を受けていたことを告白はすれど、虐待された人間がまた自分の子供を虐待するという、辛い繰り返しもまたあるのだと問題提起もする。

弱い人間は受けた暴力を暴力のまま次の世代に繋げてしまう。暴力の連鎖を止めるのは、人間としての心の強さだ。

主人公ミス・ペグを演じたハン・ジミン。魅力的な女優さんだった。
KUBO

KUBO