三四郎

僕たちは希望という名の列車に乗ったの三四郎のレビュー・感想・評価

3.5
資本主義=希望すなわち「資本主義万歳!」の意味が多分に含まれているが、この邦訳タイトルが素晴らしい。
ドイツ語の原題は"Das schweigende Klassenzimmer"(沈黙の教室)だ。
この原題における"沈黙"は、高校生たちの社会主義社会への「抵抗」を表しているが、資本主義社会を生きる日本人である私からすると、社会主義社会全体を表す「沈黙」も意味しているように思える。
とは言え、久しぶりに映画の内容を理解している素敵な邦訳タイトルに出会えた!
昔の日本の映画人は邦訳タイトルをつけるのが巧かったのにいつからかカタカナのつまらない邦訳タイトルが増えた。カタカナそのまんまのタイトルじゃ映画への愛が感じられないね。

東ドイツを舞台にした映画は少ないと思うが、当時の東ドイツの高校生が何を考えどう行動したかという実話を基にした内容のこの映画はなかなかどうして非常に興味深かった。
この映画は1956年を舞台にしているが、1957年に西ドイツで『朝な夕なに』というルート・ロイヴェリク主演の西ドイツのギムナジウムを舞台にした青春映画が公開されている。同じ時代を描いていても東ドイツと西ドイツの高校では生徒の関心ごとと生徒を包む雰囲気がまるで違う。

社会主義国家を描いた映画を観ていてしばしば感じるのは、労働者階級がトップに立つとろくなことがないということ。自信も能力もない者が権力を持つと密告と監視の社会になるんだね。

テオの母役Carina Wieseという女優さんと獣医の娘だという双子がいかにもドイツ女性らしい深切そうな表情で好感が持てた。
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