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惡の華のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

惡の華(2019年製作の映画)
5.0
あの夏、僕は仲村さんと出会い、リビドーに目覚めた。
山々に囲まれた閉塞感に満ちた地方都市。中学2年の春日高男(伊藤健太郎)は、ボードレールの詩集「惡の華」を心の拠り所に、息苦しい毎日をなんとかやり過ごしていた。
ある放課後、春日は教室で憧れのクラスメイト・佐伯奈々子(秋田汐梨)の体操着を見つける。
衝動のままに春日は体操着を掴み、その場から逃げ出してしまう。
その一部始終を目撃したクラスの問題児・仲村佐和(玉城ティナ)は、そのことを秘密にする代わりに、春日にある“契約”を持ちかける。
こうして仲村と春日の悪夢のような主従関係が始まった・・・。
仲村に支配された春日は、仲村からの変態的な要求に翻弄されるうちに、アイデンティティが崩壊し、絶望を知る。そして、「惡の華」への憧れと同じような魅力を仲村にも感じ始めた頃、2人は夏祭りの夜に大事件を起こしてしまう・・・
押見修造の青春漫画を映画化。
ストーリーは、原作コミックに忠実で、山に囲まれた街でボードレールなどの純文学を理解出来るクラスメイトもおらずくだらない話題で盛り上がっている凡庸な生徒に囲まれたクラスで閉塞感を抱えて純文学や佐伯さんに逃避して生きる春日が、クラスの問題児の仲村さんに弱みを握られ、様々な変態的な要求を果たす中で自分の中の純文学や佐伯さんで満たしている空っぽなドロドロした自意識に向き合わされ夏祭りで大事件を起こす中学時代と、大事件の後で生きる屍のように生きる春日が、佐伯さんに再会し仲村さんと似たトンがった部分を持つ小説好きな常盤文(飯豊まりえ)と恋をして過去から逃げていた自分とまた空っぽな自意識を他のもので満たそうとしている「クソネズミ」な自分に気付いて自分の過去とドロドロした自意識と向き合う高校生編が交錯して描かれていて、難解な純文学を読んでいる自分を誇示して周りのクラスメイトを見下し「自分を特別な存在」と勘違いしたり、閉塞感に耐えられず道に外れた破壊行為やいたずらをしたり親や教師に反抗したりする荒々しい思春期の心情、自分の中のドロドロしたリビドーや自意識と向き合うことで大人への階段を登るイニシエーション通過儀礼が、春日と仲村さんが教室を「クソムシの海」にするシーンや春日と仲村さんが夏祭りで大事件を起こすシーンや常盤文に触発され春日が自分の過去とドロドロした自意識に向き合うシーンなどの名シーンの数々、文学系の拗らせた自意識を仲村さんに引きずり出され向き合わされ闇堕ちしたり常盤文に触発され自分の過去と向き合う春日の心情を丁寧に演じた伊藤健太郎や周りのクラスメイトの偽善に苛立ち春日のドロドロしたリビドーを引きずり出し周りを混乱させる小悪魔的な仲村さんを悪魔的な奔放な熱演でなりきりハマり役となった玉城ティナや優等生から仲村さんや春日に振り回されてドロドロした自意識を剥き出しにする変化まで佐伯さんを演じた秋田汐梨や仲村さんに似たトンがった部分と空っぽな自意識を持ちながら小説家を目指す春日の運命の人となる常盤文をナチュラルに演じた飯豊まりえのキャラクターそのものの絶妙な演技で、これ以上ないくらいアクの強い原作コミックを具現化している青春映画の傑作。
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