あられ

特捜部Q カルテ番号64のあられのネタバレレビュー・内容・結末

特捜部Q カルテ番号64(2018年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

未解決難事件を解決する ”特捜部Q” シリーズ第四弾
民族・階級差別&優生思想という重いテーマが絡んできます。
吹替え版で見ました。

この物語は実話ベース、事実に基づくフィクションです。デンマークだけでなく、そもそも日本や世界各国の先進国でも、普通に悲しい劣者の排除が行われていたという事実があるということが胸糞悪いです。

“質の劣る物は出産を禁ずる” ー K・K・スタインケ
“質の劣る者とは ー 精神障害者 反社会的人間 性的倒錯者 依存症者などである” ー JH・ルーンバック医師
1934年から1967年までに1万1000人以上の女性が、強制不妊手術を受けた。

これらのメッセージがこの映画のエンドクレジットに映し出されます。スタインケは優生思想を主張したデンマーク社会民主党の実在した政治家で、ルーンバック医師はこのストーリーのモデルになったと思われます。また、物語の発端となったスプロー島の女子収容所も、1923年から1961年まで実在していたらしいです。


コペンハーゲンのアパートの一室の壁の中から謎の小部屋が見つかり、そこからテーブルを囲んだ状態で、椅子に鎖でくくりつけられた、ミイラ化した3人の男女の遺体が発見された。内蔵は体内から取り除かれ、生殖器官はエタノールの入ったガラス瓶の中に詰められて、食卓に置かれていた。傍に一つの椅子が倒れていたことから、 “特捜部Q” のカールは、もう1人来るはずだったと予想する。

彼らの死因は ヒヨスチアム・ニジェールの過摂取。このヒヨスは、中東の病院では麻酔薬として使われていた。少量なら酩酊状態ですむのだが、大量に摂取すると中枢神経が麻痺して死に至る。

“特捜部Q” のカールとアサドは、部屋の借主や、部屋にあった3人の身分証明書などから、この遺体が1961年に閉鎖された、スパロー島にあった女子収容所の関係者であることを突き止める…。

このミイラ、いかにも博物館にありそうな本格的な造りで、めちゃくちゃ気色が悪いです😱

この女子収容所で医師をしていたクアト医師夫妻は、優良な遺伝形質の保存・増加のため、強制不妊手術を施し、移民や障害者などの劣者を排除するという、恐ろしい思想を持った秘密結社 ”寒い冬” という組織活動をしており、医療界で権力を振るっています。“寒い冬” のメンバーは医師だけに限らず、その中には政府組織のあらゆる階級の職員たちも含まれていました。

凄まじいレイプとか警察官が襲って来るとか、中々にショッキングなストーリー展開です。

そして、アサドの行きつけの店主の娘が、クアト医師の経営する病院で、中絶手術を受けてしまうと言う悲劇に見舞われる…。

堕胎手術を受けたら子宮を摘出されていたとか恐ろしすぎです😱

社会福祉が充実し、移民に優しく差別なんかないと思われる幸せの国デンマーク。しかしシリーズを通して、移民であるアサドが何度となく差別を受け、デンマーク人の本性は差別的である人も多い、と言うことが仄めかされてます。


今回の見どころの一つは、1961年時の被害者女性とカールが船上で話し合うシーン。彼女の持参していた死なない程度のヒヨスを酌み交わしながら、彼女の過去の経緯に耳を傾けるカール。彼女の話には心がしめつけられます。カールはヒヨスでハイになり、ふらふらになりながらも、彼女の思いを受け止め、逮捕はしません。「神に見捨てられ、政府に裏切られても愛が勝つのか…。もし運が味方をすれば…」変人と思われているカールの優しさが垣間見れました。

もう一つの見どころは、カールとアサドの人間ドラマ、関係性の推移です。1作目から順に見ていくと、カールの心の変化が顕著に表れていて面白いです。

冒頭、アサドに一週間後の異動の辞令が出ます。5年間組んでいたバディ。それなりにカールを助けてきたアサドは、カールに引き止めてほしかった。しかし、カールは労いの言葉ひとつかけてこない。アサドはカールの性格を把握しているものの、それがめちゃくちゃ気にくわない💢

一方のカールは、人との馴れ合いが嫌いでツンツンした性格。無愛想で言葉足らずです。気持ちの中ではアサドと仕事を続けたいのだけど、滅多に昇進できない移民であるアサドの出世を邪魔したくはなかった。カールは前作でアサドに感謝の言葉をかけるなど、対人関係や心に変化の兆しが見えてきてます😊

そして、命を狙われたものの、最後に一命をとりとめたアサドに、カールは思い切って告白する。「お前には残ってほしい、特捜部Qに。ローセにはお前が必要だ」「ローセにですか?」「それと、俺にもだ。残ってくれ」やっと本心が言えたカール。涙ぐんでるアサドがカールに握手を求める。カールも涙を堪えながら握手に応じる。感動する場面ですね!むさいおじさんだったカールが、すっかりイケメンに見えてきました😆

ラストは、カールが前から気になってた女性に声をかけるところで終了w カールの変わりように、一瞬何があったか理解できずに固まりました😆

さて、次作からメンバーが総入れ替えとなります。おかげで途方もないロス気分を味わっています😭
あられ

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