さふらん

ジョジョ・ラビットのさふらんのネタバレレビュー・内容・結末

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 靴紐を結んであげる。それは、おまじないとかお祈りにちょっと似てる。ありとあらゆる暴力と恐怖、理不尽に溢れた世界に出るとき、どうか倒れることなく、あなたがこの地に立っていられるように。
 何もかもを取り上げられた死者。彼女に似合う赤い靴は絞首によってぶらりと意味を失った。青ざめた足に縋りつき、もう大地を踏むことのない靴の紐を結んであげるジョジョ。想像力豊かで愛に溢れた女性だった。彼女はもうパチン!と音の鳴るチャーミングなウィンクをすることはないし、エルサと温かい夜を過ごすこともないし、ジョジョのおでこに真っ赤な口紅が咲くこともない。
 ジョジョの家の屋根裏のさらに壁の中で生活をするユダヤ人のエルサは聡明な女性。しかし、彼女の靴も意味を持たない。自由で尊い身体は暗く狭い壁に閉じ込められている。
 片目の不自由な大尉には愛する男性がいる。しかし、最後のシーンで彼の隣にあるのは大量の瓦礫。彼はジョジョに走る力を与える代わりに、もう使われることのない両足を引きずられてどこかへ消えた。
 自由になったら何をする?エルサは滔々と答える。「踊る」と。
 エルサの靴紐を結ぶジョジョ。彼の小さな頭を見下ろしながら、エルサの胸には愛が広がる。愛が靴を与える。外に出て、自由に何かを愛する力を。

 暴力はいとも簡単に愛する人の靴を奪う。それも残忍な方法で。これは今まさに、現実でも行われていること。🍉
さふらん

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