KNY

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスのKNYのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

2022/05/08加筆

スパイダーマンNWHを置き去りにする加速度と情報量。なんだこれは…キャラクターシリーズで言うと“ウィンターソルジャー”以来の感動。あらゆるサプライズも含めて今年のベストだといって差し支え無い。

特に、スパイディ3部作のヒットでマーベル映画を一大コンテンツに押し上げた立役者であり、元来ホラー映画の巨匠でもあるサム・ライミの起用。
エンドゲームで一区切り着き、スティーブやトニー、さらにはピーターパーカー不在のMCUへの心許なさが少なからずあったのを一撃で吹き飛ばしてくれた。それほどに今後のシリーズを化かすポテンシャルがこの映画にはある。

マルチバースを舞台にしたことで実写の範疇を越えた映像表現ができ、コミックやドラマシリーズ、アニメ等を観ることでMCUは無限に楽しめるコンテンツとなりそうだ。

ここから下は大きなネタバレとなるので観てから読んでくれ貰えるとという感じだが

まず、ワンダヴィジョンのみならずNWHの続編とされている(時系列が地続きとなっている)が、
なんならNWHを観ずに挑んでもそこまで???とならない。
そもそもの話で、NWHの直接的な続編とされていた理由が、事前に告知されていたあらすじが
『禁断の呪文によってマルチバースの扉を開いてしまったためワンダの力を借りてなんとかカントカ…する』
といった内容だったし、NWHのポストクレジットを本作の予告に使ってすらいたので、ここまでの情報で我々は
『無邪気な青年ピーターパーカーの無茶振りとストレンジが使った呪文のせいで混沌が生まれその尻拭いをする』
という、実質的にはNWHの後編かのような認識をしていたと思う。作品の序盤でそれが全くのフェイクであるという驚きがあった。確かにこれは公式からネタバレ厳禁の呼び掛けがあるはずだ。

なかなか立派なミスリードである。
ピーターの記憶は皆から消し去られているためもはやストレンジに何の尻拭いをする必要があるのかという気はしていたが、まさに意表を突いたストーリーラインであった。
よく考えたらピーターの件はNWHですっかり一件落着しているはずだったのだ。

ところで、これはきっと賛否両論だろうなと思ったことの一つはイルミナティ。
これとバーサーカーモードのスカーレットウィッチを闘わせたら圧倒的に不利なのは分かっていたが、悉く散っていく始末…(正直なところカーターとブラックボルトの死亡シーンは吐き気すら催した
劇場では小さく歓声が上がっていた、サプライズ登場のプロフェッサーXも惨殺。
この映画にキレている人の殆どはこことワンダの処遇にショックを受けてるはず。
まあコイツらは生き残っていても収集付かなかっただろうから、まあ良い。が、ヒーロー映画らしからぬグロシーンにウッとなる気はする。

というか、ワンダが圧倒的に強すぎて怖い。自決させないとどうにもならないインフレを起こしてるのがヤバいというだけかも。

また、これも賛否を呼んでいるワンダの扱いに関しては
救われなさすぎてあまりにも…というのは解るが
立ち位置が“アップデート”されなかったのは幼少期の記憶、トラウマ、幸せな暮らしへの憧憬が強かったから(ここはワンダヴィジョンで補完的な描かれ方をしている)であり
女性だからとかそういうのよりも、極々普遍的な理由で彼女が闇堕ちしてしまったという風に考えるのが自然だと思う。

人はヒーローにもなるしある時を境にヴィランにもなってしまう
という観念はMCU全体を見渡しても度々見られるのだが、今回はワンダにおいて顕著だった。

特に、ワンダに関しては初登場以来すでに他のキャラを圧倒するチート級の火力を持っていたわけで
(これは後出しジャンケンな解釈であることは承知の上で)自身の不安定な情緒もあって、その強大な力はいつか悪の力を帯びていくのでは?という不安も常に孕んでいたと思う。
実際のところワンダヴィジョンで完全な闇落ち確定演出があったから、その不安は確信になっていた。


(ここで2回目を鑑賞し追記)
イルミナティの惨殺に妙に腑に落ちる部分がある。1回目の鑑賞時も思ったが、死亡フラグはビンビンである。
スカーレットウィッチの自死に関しても、ディフェンダーストレンジの死に関しても同じ事が言えるが、事を成し遂げる誰かを犠牲にしようとする人物は勧善懲悪というか何というか…な最期を迎えている。同じ選択をした者は皆同じ報いを受けるように、徹頭徹尾、一貫している。イルミナティに関してはその世界線に蔓延る欺瞞が、ワンダに関しては傲慢が彼らを滅ぼす引き金となった。
ここで明確な違いとして描かれているのは現実世界でのストレンジ。序盤でチャベスを犠牲にしたのとは打って変わって、“彼女の力を信じた“行動に出る。この現実世界のストレンジの選択が彼を真のヒーローたらしめているのだ。

思えば、エンドゲームではトニー、NWHではピーターにしても、最適解であり最も残酷な選択肢と判っていて彼らをサクリファイスしてしまったという過去があるから、今回のストレンジにも大きな成長があったと言える。そして、トニーやピーターと同じようにワンダを見送ることになったのは、生涯彼の背負わされている業なのだろうか。
(追記終)

スカーレットウィッチの行動原理などを理解する為にワンダヴィジョン履修必須だが、ディズニープラス未加入でもパンフレット等で楽しめるようにしたのは親切(転売厨の餌食となったが

ストレンジだからこその映像体験が出来る非常に素晴らしい作品です。
ダニーエルフマンの最高なサウンドトラックも聴けるので是非!
KNY

KNY