猫脳髄

吸血の群れの猫脳髄のレビュー・感想・評価

吸血の群れ(1972年製作の映画)
3.2
ゲェコゲェコゲェコゲェコ…

AIP謹製、1972年製作のアニマル・パニック映画。ただし、AIPの屋台骨ロジャー・コーマンはすでに去り、ニューワールド・ピクチャーズを立ち上げた端境期にあたる。また、アニマル・パニック作品の傾向を決定づけたといっていい「JAWS/ジョーズ」(1975)以前の作品であり、カエルをはじめ、トカゲやヘビ、クモといったちょこまかした小動物たちが群れ集い、撮影技術の未熟さと相まって、牧歌的な雰囲気をまとっている(※1)。ただし、公害問題に言及したホラーとしては早い時期にあたると思われる。

当主であるレイ・ミランドのバースデイと独立記念日を祝うため、湖沼に浮かぶ島の館に集う富豪一族。湖の調査に訪れていたフリージャーナリストのサム・エリオットも行きがかり上パーティーに参加することになる。島では環境汚染の影響下、ウシガエルはじめ小動物が異常繁殖しており、やがて屋敷を取り囲むまでになる。独裁的なミランドが避難を拒否するなか、一人またひとりと群体の餌食になっていく…という筋書き。

ヴィジュアルこそカエルを押し出しているが、数はやたら多いにせよ、単なるにぎやかしに過ぎない(※2)。人を襲うのは毒グモや毒ヘビ、さらにはワニなどの大型生物の役目となる。しかも、動物が積極的に襲うというより、人間がひとり相撲で進退窮まった挙句にやられてしまう体たらくである。襲撃シーンの演出は難しかったらしく、自然ドキュメンタリーのような小動物の様子と恐怖を浮かべる犠牲者の表情のスイッチでなんとかやり繰りするのが微笑ましい。

しかし始終カエルが鳴き続けるのは異常で、エンドテーマの代わりに鳴き声である。これはしばらく耳から離れない。

ゲェコゲェコゲェコゲェコ…

※1 あえて申せば「鳥」(1963)の系譜だろう。ラスト近くで臆面もなくコピーをやってのける
※2 メインヴィジュアルのような人喰いガエルは劇中には登場しない(大型犬くらいの大きさが必要だろう)。ただし厳密にいえば、エンドロールの最後に質感の違うユーモラスなアニメーションとして一瞬登場する。ほら、嘘ではなかったでしょ?といわんばかりに
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