かぴばら

クーリエ:最高機密の運び屋のかぴばらのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

ドカンドカン派手に爆破するようなエンタメスパイ作品ではなく、静かに水面下でことが進むスパイ作品。いや、作品じゃなくて実話か。


観てる間ずっと、ヒヤヒヤ?ザワザワ?ソワソワ?ジリジリ?なんだろう。なんて表現したらいいんだろう。落ち着いていられない、なんとも言えない感覚がまとわりついてた。そんな作品。



学生の頃に習ったかな?ぐらいの記憶しかないキューバ危機。その裏側でこんなことごあったなんて知らなかったし、たぶんこの作品がなかったら知らないままだった。
ただのセールスマンが、東欧に出張が多いというだけの理由でスパイにスカウトされて、無関係だったはずの政府の思惑に巻き込まれていく…
最初に話をもちかけられた時の、ジョークで流そうとしたウィルの気持ちよ。そりゃそうだ。なんで自分?って思うよね。
それでも、その要請を受け入れて、ソ連へ渡ってオレグと知り合って。
こんな危険なことやりたくないと思いつつも、オレグとの友情はしっかり育まれてたんだよね。
奥さんに浮気を疑われて家庭崩壊の危機で。自分自身も危険だって明らかな状況で。
それでも、オレグが危ないと知って動かずにはいられなかったんだよね。
君たちは彼を知らない。僕を使え。ってウィルのセリフがあまりにもかっこよかった。


オレグ一家の亡命のためにソ連に渡って。二人で白鳥の湖を観劇しているシーン。涙を流してスタオベする姿が印象的だった。
そこから転がり落ちるように状況は悪化していって。とうとう捕まって。ウィルが受ける仕打ちが惨すぎて泣いた。
最初は「こんなもの食べるのか…」って感じで食べていたあのスープを貪るように食べて、厳しすぎる寒さに震えて。腕立ても出来ないぐらい弱って。人間とは思えないほどの仕打ちを受けても、喋らないウィルの心はどこまで強いんだろう。

奥さんとの面会で、心の支えになるようにって、家のことを聞くウィルに胸が締め付けられた…


オレグと再会して。お互いやせ細った姿で。
震えるながら互いの手を握った所で涙腺決壊。どんな仕打ちを受けても切れなかった友情に涙が止まらなかった。


最終的にウィルは解放されて、オレグは処刑されて。
実話だからその結果が覆ることはないけど。
できることなら、オレグにはモンタナで幸せに暮らしてほしかった…




緊張感、焦り、恐れ、苦悩といった感情や状況を繊細に魅せたその演技力。そして、最初のぽっちゃり姿から最後のやせ細った姿まで、体型をここまで変えてきたベネディクト・カンバーバッチに脱帽。天才じゃない役って新鮮だけど、人間味に溢れてて、独房でのシーンは圧巻だった。
それから、オレグ役のメラーブ・ニニッゼも。張り詰めた緊張感、家族の前でだけほんの一瞬見せるほっとした感じとか。ワンシーンのためだけに激ヤセして見せたのもすごい。




大々的に宣伝してるわけじゃない作品だけど、めっちゃ良かった。観てよかった。





【追記】

書くの忘れてたから追記するんどけど、オレグに毒盛って、ウィルに尋問してた人。グリバノフって、ちょっと板尾創路に似てない?
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