まーしー

クーリエ:最高機密の運び屋のまーしーのレビュー・感想・評価

4.0
米ソ対立の冷戦時代。
第三次世界大戦も危惧される中、祖国の機密情報を漏洩させたソ連GRU幹部とイギリス人セールスマンの交流をサスペンスフルに描く。

半世紀以上前の話ながら、当時の政治的緊張も情報戦であったことが伺える本作。
特に、ソ連が恐ろしかった。当たり前のように周囲でスパイが見張っており、盗聴や読唇術から裏切り者が炙り出されるという、何とも恐ろしい社会として描かれていた。

そのような中、自身の危険を顧みず、世界平和のためにソ連を売ったGRU幹部のペンコフスキーの姿には感銘を受けた。
そして、一般のセールスマンながら、彼を信じ、極度の緊張下で情報の運び屋を請け負ったウィンにも脱帽した。
二人に共通するのは、報酬や名誉を目的とした行動ではないということ。平和を守るという正義感、家族を守るという責任感が、彼らを突き動かしているように映った。

情報の運び屋ウィンを演じたベネディクト・カンバーバッチが、圧巻の演技を披露。
本作の終盤は見るに忍びない展開となるが、その時間は決して長くない。
しかし、そのわずかな出演時間のために、ベネディクト・カンバーバッチは実際に10kgを減量したとか。特殊メイクやCG処理が可能な時代だけに、リアリティを求める彼の役者魂を感じた。

ソ連の情報をMI6やCIAに情報流出させる緊迫感に加え、ペンコフスキーとウィンの友情には胸が熱くなると思う。
緊張と感動が押し寄せる本作は、ベネディクト・カンバーバッチの体を張った演技も加味された、見応え十分な一本に仕上がっている。