genarowlands

多数から一つへ: 私が米国に来た理由のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

3.7
合法移民に市民権を与える制度がトランプ政権下で促進され、「市民権テスト」に合格すると市民権が与えられる。そのテスト受験者への講義とインタビューから成る短編ドキュメンタリー。9.11以降、移民への風当たりと危険性を感じ、市民権を得たいと考えている人が増えている。

タイトルは、アメリカ合衆国の国章にあるラテン語で、「多州から成る一つの国、すなわちアメリカ」を意味する。

34分の短い中にも苦難の道を辿ってきた人たちのドラマを感じた。ドキュメンタリーだけど、「民主主義と自由」を求めてアメリカに移民したい人向けに編集されている。世界の移民の4分の1がアメリカに移民したいと願っているという。

アメリカという国は移民から成り立っているから、宗教、言語、文化、習慣の異なる人たちに説明して理解してもらい、一つの方向に向けさせるコミュニケーションの仕方とか、説明の順番とか、心の掴み方とかホントうまい。アメリカを支える一員になることを決意させる流れで、あやうく洗脳されそうになった。

島国日本の温湯に浸かっているので、国で迫害を受け、追われたり、独裁政治で命の危険や自由の拘束に曝されたりする人権問題は、間接的にしかわからない。アメリカにはそういう人生を負った人たちがずっと歴史的に続いて移民してきていて身近な問題。皆移民。だからこそ民主主義と自由が最も大切で、それを守るために義務を負うことも誓う。その義務とは民主主義と自由を守るために銃を持つことも厭わないということ。冒頭でRBGが明確に戦う意志があることを宣言していた。

代々の王様や支配者階級のいない国の民になるということは、支配者はいないのだから、市民が主権をもち、市民が国を支えること。そのために権利と義務がある。そのワンセットを短編で見事にまとめていた。

アメリカとは、国の成り立ちがアメリカ以外のどの国とも違うことを改めて確認した。日本における国籍とアメリカでの市民権は同じなんだけど、国の成り立ちが違うから、ずいぶん意味が違う気がする。

他の移民関連の作品で「アメリカへ移民したい」という言葉は非常に希望に満ちた、しかし難しいことのエピソードとして描かれている。

選ばれた移民の中の移民なんだろうか。

移民関連の作品は続けて観て行きます。
genarowlands

genarowlands