cozy

王国(あるいはその家について)のcozyのレビュー・感想・評価

5.0
閉鎖と開放の両極端を併せ持った映画であった。
スタジオという閉鎖的な空間の中で物語は描かれて進行していく。男は家庭を他者に介入させない閉鎖的な王国として作り上げた。また主人公と女の間にも2人だけが分かり合えるつながりが確かに存在した。
一方、台本片手のリハ風景をひたすらに繋げた本編は俳優たちが普段見せない姿を観客に晒すという点において開放的であった。その効果としてはできるだけ少ない情報量で物語を観客に提示することができるということである。基本映画というのはロケで撮影をして音楽をつけて編集して完成されるがこの映画はそれらの要素を削ぎ取り、同じ場面を繰り返すことにより、観客に想像の余地を与え、同じ場面を見るたびに解像度を上げることができる。
観終わった後に観客に残る映像は一人一人全く違うものとなるという新しい映画体験であり非常に胸が高鳴った。
主人公が男に言った「あなたは他者を介入させない閉鎖的な空気を出している」という台詞には痺れた。
ぜひもう一度観たい。
cozy

cozy